完 結 編。

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***


「…………」

目の前で、すうすうと呼吸をする恋人を見つめていた。
結局あの後。

Aが赫刀で突き刺した左胸から、ぼろぼろと黒死牟は崩壊していった。
鬼舞辻無惨も、最後には、消えた。正真正銘、世界から鬼はいなくなり、平和が訪れた。

ただ。まだAは、目覚めない。
胡蝶さんも辛うじて生きていた。右の手首と足を失っていたが、蝶屋敷の皆や柱に支えられ、まだ元気にしている。

胡蝶さんは「Aが最後に出した技の影響」だろうと、顔を歪めて言っていた。
透白華。Aはあの時ふらふらと不規則に動いていたのに、確実に、黒死牟を斬っていた。右目も失い、距離感が掴めないであろう中で。

「私は無一郎を守るから」

いつかの日のことを思い出す。冗談混じりに笑って、僕に言ってくれた言葉。その時僕も誓ったはずだった。Aを守ると。

ぼろぼろ。気づけば視界は溶けていて。
御伽噺じゃないから、俺の涙が零れた瞬間、Aが目覚めたなんて、なかった。ただ無意味に零していた。止まらなくて。悔しくて。悲しくて。

あの時も。Aが逃げ遅れそうになった時も。思わず体が動いて、Aを逃がした。
最後は倒せたから良かったものの、柱失格と言われても可笑しくないくらいの行動だった。

無意味だ。
無意味。

「っ…はやく…起きてよ…いつまでっ、寝てるん、だよ」

ぼろぼろ。ぼろぼろ。

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