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「A、Aっ、…」
上弦の壱は死んだ。
Aは。
「っ、っ、は、ぐっ、」
苦しそうに荒い息をしている。右目は無残にも斬られて、顔が血まみれだった。傷口に触れないように拭う。
「しっかりして、ねぇ…A、」
「っ、うぅ、っ、む、いちろ、どこ、」
「ここにいる、生きてる、」
ひゅう、ひゅう、という、喉を通る苦しげな呼吸音。
Aの目はかつての自分のように霞んでいた。
「時透、冬舘は無事か」
「息は…してます、でも、」
「……」
Aは激しく咳き込んだ。少し、血を吐く。慌てて頭を撫でた。意味は無いと気付いたのは数秒たったあとだった。混乱している。
いつの間にか、Aの頬にも痣が出ていた。
血に塗れていて気付かなかったが、雪の結晶のような形をした痣だ。こんな状況だけど、美しい、なんて思ってしまった。
「冬舘ェ…」
不死川さんが近寄る。玄弥も共に。
「……全員生きてる。時透も、悲鳴嶼さんも、玄弥も、俺も」
「…っ、っ……」
「……だから死ぬな…全員生きて帰るぞ」
「……、」
雪の呼吸の最後の技は、こんなに辛い苦しいものなのか。何も出来ない無力さに腹が立つ。
不意に、自分の手首が目に入った。右手首。
いつの日か、Aが編んでくれた組み紐が揺れた。
「………あの…この組み紐、気休めにしかならないだろうけど…」
***
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結衣(プロフ) - 完結おめでとうございます!本当にハッピーエンドですね笑笑 本誌だともう出てくるたびに泣いてたので、、本当にお疲れ様でした。むいくんの誕生日楽しみにしてます! (2020年5月20日 18時) (レス) id: 3b6ed38452 (このIDを非表示/違反報告)
ももんが(プロフ) - むいくんの誕生日、楽しみにしています!最後まで、本当に本当に最高でした!お疲れ様でした! (2020年5月17日 20時) (レス) id: 5f1c65421c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴歌-Rikkai- | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/suzuka-Rikkai-/
作成日時:2020年5月17日 8時