義勇と蔦子と鬼 ページ4
鬼の大きな頭が弧を描いて宙へと飛んだ。
それを蔦子と義勇は呆然と見て、そして恐る恐る首を刎ねた女へと視線をやる。
女は口を開くことなく、血がついたまま刀を鞘へと戻し、女はゆっくりと蔦子と義勇を見た。それに2人は肩を揺らしながら気付く。
女は笑っていなかった。
先程、笑っていたのは幻だったのではないかと思うほど女の顔に表情はなかった。
蔦子は女に、両親の仇を討ってくれてありがとう、と口を開こうとした時、蔦子と義勇の目の前を数匹の揚羽蝶がひらひらと通り過ぎていった。
その揚羽蝶は真っ直ぐ女の元へと飛んで行き、女の肩に止まった。それを皮切りに、揚羽蝶が飛んでくる。
そんな不思議な光景に蔦子と義勇は魅入っている中、女が眉を寄せ口を開いた。
「貴方達以外、この付近の家に生存者はいません」
「…え?」
蔦子は思わず口を抑えた。そして涙を流した。義勇もまたすぐに理解して視線を落とし唇を噛んだ。蔦子姉さんと契りを交わす伴侶は家が近く家族同士で付き合いがあった。両親を襲った鬼によって蔦子姉さんの伴侶も、近くに住んでいた親戚も殺されたということだろう。
「…私が」
女は泣く蔦子を一瞥して、口を開く。
「私が貴方達の元に来れたのは、貴方の事を教えて下さった男性から聞きました」
「…」
「その男性は致命傷を負いながらも、声を上げて助けを呼んでいました。その声が無ければ、私は貴方達を助けることが出来ませんでした」
"僕の、僕の大切な人が少し行った先にいるんです。妻になる人がいるんです、あの化物は妻が住む家の方へと向かいました…どうか!どうか僕の大切な人を助けて下さい、お願いします… "
女は一言一句力を込めて蔦子へと伝えた。その男性は間違いなく蔦子の伴侶だろう。女はそんな蔦子へと視線を見ながら言う。
「貴方の伴侶は、立派な方です」
それを聞いて、蔦子は声を上げて泣いた。
義勇もまた蔦子と共に泣いた。おんおんと声が枯れるくらいに、たくさん泣いた。
「狭霧山の麓に住んでいる鱗滝左近次という老人の元に訪ねなさい。藤峰Aから聞いたと言えば伝わるようにしときます」
蔦子と義勇が落ち着くまで待ち、ようやく女は口を開いてそう言った。
「その老人は人間で、必ず貴方達の力になってくれるはずです」
「…貴方は本当に鬼なのか?」
義勇は訪ねた。女は笑みを浮かべた。
「鬼だよ。紛う事なき鬼だ」
そう言って女は踵を返して歩き出した。
これが冨岡義勇との出会い
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作者名:まはまは@みんく | 作成日時:2019年7月24日 22時