あなたと婚約者 ページ37
「かっこよくて、いい人だからきっと好きになるわよ〜！」
『へ、へえ.....』
「あと！！お金持ちのお坊ちゃんだそうだからきっと大丈夫！」
何が大丈夫なのだろうか。
私の顔は引きつっているのだろう。
『あの、お母さん。私それ今初めて知ったよ...』
「今初めて言ったもの〜」
なぜそんな大事なことを今、世間話のように言うのだろうか。
『そういうのは事前に言うものでしょ、どうしてそうなったの？』
「お花屋さんで働いているあなたに一目惚れしたって言うんですもの〜！」
「よもや！」
「お父さんももう怒っちゃって！賭けで勝負だ〜って！」
『で、負けたんだね....』
「負けました〜！でも借金もチャラだって〜」
自分が賭けにどれだけ弱いかわかっていない父親に呆れ果てた。
杏寿郎くんも先程からよもやとしか言っていない。
どうしよう。
顔も知らない相手と婚約しているなどとはおもわず、顔を地面に落とす。
女はこれほど無力なのか。
実感などもなく、ただ、悔しくて下唇を噛む。
実家に寄らなければよかった。
流れそうな涙を堪えながらそう思った。
「あ！そうそう！明日早速お店にいらっしゃるみたいだからご挨拶してね〜！」
『う、ん』
どの人が私の婚約者か分からないけどね。
なんて心の中で言う。
先程から杏寿郎くんは黙ったままだ。
そりゃあ幼馴染に急に婚約者ができたのだ。
本人である私は驚きすぎて逆に冷静になってきた。
「そのまま2人で逢い引きとかいっちゃったら〜！」
『あ、逢い引き.....』
「そうそう！夫婦になるんだから〜」
今まで誰とも付き合ったことの無い私は戸惑うしかない。
夫婦。
素敵な響きだと思っていたが今は全く魅力を感じない言葉になってしまった。
私がいくら嫌がっても両親が決めた約束だ。
なんなら賭けに負けている。
そして父の借金をなしにしてくれるそうだ。
いいじゃないか、かっこよくていい人だそうだ。
しかもお金持ち。いいじゃないか。
でも、その人と結婚したらお店は続けられるのだろうか。
杏寿郎くんとの朝の暖かい時間はなくなってしまうのだろうか。
と急に不安ばかり浮かんでくる。
『嫌だ、な』
ぽつりと呟いた言葉は母の声にかき消された。
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ねむこ(プロフ) - 柑橘蛍さん» 柑橘蛍さんコメントありがとうございます〜！わかります.....推しは尊いですよね....読んでくださってありがとうございますー！ (2021年2月12日 12時) (
レス) id: 81a8bcf75d (このIDを非表示/違反報告)
柑橘蛍(プロフ) - 今日も今日とて推しが尊い…！ (2021年2月10日 0時) (レス) id: c6603d0c65 (このIDを非表示/違反報告)
ねむこ(プロフ) - 晶子さん» はじめまして！コメントありがとうございますー！記憶したい！？！そこまでですか〜！？感謝です... (2021年1月17日 0時) (レス) id: fdabd54cfd (このIDを非表示/違反報告)
晶子 - 初めまして！何ですかこの神作品は！？最高です（ ; ; ）何度も読み返してしまいます。。！！もう記憶してしまいたいくらい！！ (2021年1月15日 20時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
ねむこ(プロフ) - 沙希さん» こちらこそありがとうございます...！！！！！！長編なので大変でしょうけど最後までよろしくお願いします...！ (2021年1月10日 13時) (レス) id: fdabd54cfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねむこ | 作成日時：2020年10月28日 8時
