ずっと、もっと。 (ページ18)

今日:9 hit、昨日:12 hit、合計:315,629 hit

18 ページ18

・

松田side

「元太くん好きな人いるの？」

思ってもみなかった質問に拍子抜けする

いるも何も、目の前にいる人だけど、と
思いながらもなんとなく誤魔化した

きっと最初の俺への印象もあるだろうけど、
なぜか多分この人は俺は自分を恋愛対象に入れるわけないと思い込んでいるから平気で
自分の好きな人の話をしてくる

叶いもしないのに悲しい顔しながら話しちゃってさ

こんなに近くにずっと笑顔でいられる人がいるのに

俺も俺で、方法は間違ってるかもしれないけど
確実に近くにいれる関係になればなるほど
どんどん自分の気持ちを伝えることが
難しくなってるって分かってる

こうやってあれこれ考えるのが面倒くさいから

恋愛は好きじゃないし苦手だ

的外れな気遣いをするAさんを見つめると
海人さんに選んでもらったらしいピアスが目に入る

何かを上書きするようにそこに口付けると
くすぐったそうにAさんが身を捩った

「…外したら、これ」

俺といる時くらい、と言いかけ口をつぐむ

「え、なんで？」

不思議そうな顔をするAさんは
本当に俺の気持ちに気付いていないんだなと
結構、残酷な人だと思う

「だって＂そんな大事なもの＂、動いてて
落としたり壊れちゃったら悲しくない？」

…ま、残酷だなって思ってしまう道を選んだのは
俺なんだけど、と

Aさんに負けないくらい
哀れな自分を慰めるかのように
Aさんに深く口付けそっとピアスを外し
ベッドサイドテーブルに置いた