廻った世界で月を探す【ONEPIECE】【呪術廻戦】

▶追憶：姉弟組誕生秘話 ページ8

No side

まだAが二年に昇級したばかりの頃、依然新入生全員とは顔合わせが出来ずにいた。

それは、嫌がらせのように舞い込む任務と出張、かと思えば当主として家督を継いだ家の用事で学校は欠席しなければならなかったから。



今年の新入生は三人＿＿その内禪院真希とパンダとは既に会っていた。

真希とは家の関係で知り合い、パンダとは入学以前に学長を通じて面会していたのだ。

故に残りはあと一人＿＿呪言師である狗巻棘のみだったのだが…




＿＿＿





任務帰り、久々に半休が貰えたため休息を取ろうと学生寮へ向かう道中、Aはふと見慣れない人影を見かけた。
五条とは違うグレーに近い白髪を短く切り口元を布で覆った彼は、Aと変わらないであろう背丈で端正なその顔にはまだ幼さが目立っていた。


不思議に思いAが思わず見つめてしまうと、パチリと彼と目が合う。

同じ紫紺の瞳が、微かに揺れた。




『…こんにちは』




このまま通り過ぎるのも印象が悪いかと小さく挨拶をすれば、彼の涼し気な目元が何度も瞬かれ、きらきらと光を宿す。
そしてにぱっと愛らしい笑みを浮かべると。




「＿＿高菜！」

『え、高菜…？』




まさかの高菜で返された。


なんで…？どっから出てきた…？と頭の中が疑問符で埋め尽くされていると、彼は少し慌てたようにバタバタと手を動かす。
身振り手振りで何かを説明しようとしているらしいが、もしかして喋れないのだろうか＿＿と、そこで、もしやと思い付く。




『あなたが狗巻棘？』

「！しゃけ！！」




喋れないのは、言葉に制約があるからではないか。

そんな推察は見事的中したようで、狗巻は大きな返事と共に首を縦に振る。


人懐っこそうな子だなと他の一年二人を思い出しながら、彼に向かって手を差し出した。

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