存在の利用 ページ30
．
重なった唇に、少しだけ驚く。
けれど嫌な感じはしなくて、黙って左馬刻の言葉の続きを待った。
「別に、無理して笑わなくて良いだろ」
『…うん』
気を使う必要はない、と暗にいわれ夜空は笑みを消して頷く。
左馬刻はその反応を見た後、夜空の額を一度弾いた。
夜空はそれに「痛い」と言って額を抑える。
『…何があったか聞かないの？』
「…こういう時だけは、一丁前なこと考えてやがるテメエの事だからな。
別に、俺様はテメエの考えを否定するつもりもねぇしよ、どうせ聞いたところで変わんねぇかんな」
ぶっきら棒にいわれたその言葉は、きっと照れ隠し。
夜空は彼なりのその不器用な優しさに、顔を伏せた。
『…ありがと』
「おう」
まだ、気付いてはいけないこの感情。
絶対に、この関係を崩せないから。
『…壊れそうになったら、シロ君も私を頼って良いからね』
「どうだろうな。
…だが、その為のこの関係だろ？」
左馬刻の言葉に夜空は目を見開き、そして目を細めた。
『気付いてたの？』
「まあ、こんだけ一緒にいれば嫌でも気づくだろ」
「それもそうか」と夜空は頷いて、少しだけ左馬刻に近付く。
肩が触れ合うような、触れ合わないようなギリギリの距離で夜空は一度目を伏せた。
『怒らないの？』
「あ？
んでだよ」
『だって、つまり私はシロ君を利用しているわけで』
「別に、それは俺も一緒だ。
これで怒っても何の利点もねぇだろ」
呆れたような左馬刻の言葉に夜空は笑い、腰を持ち上げる。
確実に、自分の中で大きくなっていく彼の存在。
気付いては駄目だった。
気付いて仕舞えば、ここまで保って来た関係が崩れてしまうから。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 60人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Cynic** - 豪炎寺修也推しさん» コメントありがとうございます。この作品も見にきてくださったんですね、とても嬉しいです。ご期待に添えられる様に頑張ります、応援ありがとうございます！ (2020年5月23日 21時) (
レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺修也推し - こんばんは、毎度毎度すみません…。もう文字のフォントが素敵ですね！私の最推しの左馬刻の物語なので、楽しみに読ませていただきます。更新頑張って下さい！ (2020年5月23日 20時) (レス) id: 619493ea8b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Cynic** | 作成日時：2020年5月23日 16時
