笑顔のキミが好き 【百】 26 （完結）

ヤス引退の発端　2　〜百side〜 ページ2

「ヤスさんを引退させて、Aさんのエレクトーンの腕が一流だから後任としてヤスさんが指名した、というのはどうですか？」
「凛人！？」

「ヤスさんの契約が切れるタイミングと、Aさんが認められていってる今が、チャンスでしょう。それに妊娠してからですと、時期によっては、契約更新時期を過ぎてからだったり、下手すれば違約金などが発生したりします。後手に回るよりは先手を打った方が自分としても得策だと思います。」

「おかりん･･･超イケメン･･･！」

感動していると、社長が大きくため息をついた。

「千とAが良いと言ったらだ。」
「凛太郎もイケメン！」
「兄さん！イケメンです！」

おかりんと一緒になって褒めると、照れくさそうな表情で、社長は言った。

「この先バッシングが物凄いことを忘れるな。想像以上に忙しくなる。･･･事務所員の協力は欠かせない。Aが了承した時点で、君たちで同一人物だと説明してくれ。理由が必要ならこちらから説明する。」

結果は必ず報告するようにと言って、社長はトイレに行くはずだったと慌てて出て行った。

おかりんと見合う。
お互いに笑顔になって、パン！とハイタッチをした。

「ではひとまず、ヤスさんのCM契約の更新の返事を待ってもらいましょう。」
「じゃあ、ここの会社のCMは、声出しなしで受けて･･･そしたら他の企業からもオファーが来ると思うから、それを見計らって、AでCMしないか聞こう。」
「ですが、バッシングを受けたら起用した企業にとっては痛手になります。受けない方がいいのでは？」

ああ、確かに。

「じゃあまず、メール来た企業には、Aがヤスと交代する可能性と、そのリスクについて話した上で、良いと言われたら受けよう。他は、オファーが来たら返事を待ってもらおう。そうなってからAに話そう。」

「もっと早くに話しませんか？」

「まだオファーが来るかだけじゃなくて、メール来た企業にOKもらえるか分かんないのに言えないよ。･･･引退と交代がいい結果に繋がるか不安がないわけじゃない。いくらAの好感度があがったって、嫌だと思う人は必ずいる。重要なのは、その時に味方がどれだけいるかだ。公式な後ろ盾が多くいれば、世間は動く。」

「では千くんにもその時にお話されるんですね。」

「うん。それまで黙っていよう。」
「何を僕に黙ってるって？」

パソコン画面を見ながらおかりんと話してると、後ろからポンと肩を叩かれて飛び上がった。

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