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「………理由を、お訊きしても」
「儂の勘がそう告げた」
五秒時が止まった。
だがそれは、今までのような驚愕や呆然といった類のものではない。
その声が、普段の声と違っていたからだ。
まるで、炎に飛び込む兵のような。
声の一つ一つに重みがあり、耳に入れただけでずっしりと胸に錘がついたかのような感触を覚える。
だが、こんな珍妙な我らを率いてきた彼のことだ。
きっと、彼には彼なりの策があるのだろう。
それを、私のような凡人の下っ端が根掘り葉掘り訊く意味はない。
「承知いたしました」
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「にしても、本当になんなんだこの手紙は……」
回想を静かに閉じたシグマは、未だ手の上に存在を誇示している手紙をみた。
スタンダードな封筒に、シールどめや封はみられない。
勿論、差出人の名前や住所などあるはずもなく。
“天空カジノ 支配人 シグマ”と流れる雪解け水のような達筆で書かれた我が名を見る。
面倒ごとは嫌いなタチだが、このまま何もせぬままであればもっと面倒ごとを招くこととなる。
意を決し、そのまま手紙を開けた。
中に分厚い脅迫の手紙は入っていなかった。
無論、彼を吹き飛ばすほどの爆弾も、この部屋全体に蔓延するほどの毒ガスも。
「なんだ、これは……?」
そこに入っていたのは、一輪の花だった。
小さく白く、可憐な花が一輪だけ入っていた。
(小さく白い花……何かの野菜か?)
ナス……は黄色だ、キュウリ? …とは少し違うか。
──訂正するならば、ナスは紫でキュウリは黄色の花である。
だがその事実を当人は知らぬまま脳内であれこれ考察を立てる。
………いや、名称は今は置いておいて、重要なのは目的だ。
だが、これがなんなのか判らない以上目的を探すのは難しい。
「私に花は専門外だし、誰か顧客にでも訊くか…?
いや…だが、もし恐ろしい花であったら不安を与えてしまうかもしれない。
従業員に訊くとしよう」
白く可愛らしい小さな花が恐ろしいとはとても想像がつかないが、シグマは綱渡りをする主義は持ち合わせていなかった。
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颯貴@東方&文スト大好き人間(プロフ) - 四葉のコトリさん» コメありがとうございます!幻想郷vsヨコハマは私の自己満妄想なので、喜んでいただけてとても嬉しいです…。稚拙な素人ではありますが、これからも読んでいただけると嬉しいです!! (2022年1月14日 19時) (レス) id: 61e081417a (このIDを非表示/違反報告)
四葉のコトリ(プロフ) - 初コメント失礼します!Pixiv見てたら見つけたので来ました!幻想郷をヨコハマが戦うなんて夢のようです!更新頑張ってください!応援しています!文章とても分かりやすいですね!長文失礼しました。 (2022年1月13日 2時) (レス) @page28 id: 9e21ae10ce (このIDを非表示/違反報告)
颯貴@東方&文スト大好き人間(プロフ) - ねこルージュさん» おk、すまねえ…。できたら教えてちょ (2021年12月19日 23時) (レス) id: 61e081417a (このIDを非表示/違反報告)
ねこルージュ - あ、ビビッドアーミーってやつやってるんだけど、その時の名前がこちらなのでyunanaからこれにかえま〜す (2021年12月19日 21時) (レス) id: f9dc735e37 (このIDを非表示/違反報告)
ねこルージュ - ありがとありがと。小説は少々お待ち下さいね〜。ツイステ六章で推しが弱るシーンを本能のままに書きなぐってるとこです…では、かけたら言うわ。 (2021年12月19日 21時) (レス) id: f9dc735e37 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯貴@東方&文スト大好き人間 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/MizuhasiSatuki/
作成日時:2021年9月28日 19時