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日本から遥か遠くの異国の果て。
欧州にある、存在自体が国家機密の異能者のみの監獄……ムルソー。
そのムルソーの牢獄の一つに、青年はいた。
青白くやせ気味な体躯。
すらりと長く伸びた四肢に、骨張った指はほのかに噛み痕がついている。
血色の悪い顔は、彼の赤紫の毒々しい瞳をより目立たせていた。
彼の名は、フョードル。
フョードル・ドストエフスキー。
そして又の二つ名を、奸智に長けた操心術の権化“魔人”。
彼はつい先日、日本のとある都市の異能事件に関わった容疑として此処に収監されていた。
殺人、脅迫………等、彼の関わったとされる事件に関してはもはや計測不能に等しい。
それほどまでの事象を掌握し自在に操るその頭脳。
そして、触れた相手を死に陥れる謎の異能。
今この世で、一番危険な異能者と言っても過言ではなかった。
そんな“魔人”ドストエフスキーは、指の端を齧りながら憂げな表情を浮かべていた。
彼の濁った血の泥濘のような瞳が翳る。
“ゴーゴリと連絡が取れない”
先日、彼にそんな情報が舞い込んだ。
ゴーゴリとドストエフスキーは犯罪組織“天人五衰”を共に生きる形としては仲間であり、天人五衰の頭脳担当のドストエフスキーはつい先日、彼に仕事を振ったところであった。
その仕事が特段難関でも複雑というわけでもない。
以前彼のいたヨコハマの、爆弾事故の起きたトンネルについての調査という仕事だ。
本来、ドストエフスキーの思い描いていた航海の地図には、その爆弾事件で武装探偵社の一人が収監される予定……否、
だが、なぜだか武装探偵社員は爆弾事件の首謀者として逮捕されなかった。
まるで、そこに広げてあった海図に誰かが字消しで情報を消したかのような。
だが、その時はまだ彼はさほど大ごとと見ていなかった。
今まで人生で一度たりともなかったことだが、たまには自分の思い描いた海図が間違っていることもあるだろう。
いくら地上にいる我らが海の状況を予想し海図を描いても、海の波は刹那のそよ風ひとつで変わるものだ。
その海の上にでもいない限り、海の全てを完全に掌握することなどできないだろう。
そこで、彼はゴーゴリを派遣した。何があったのかという偵察のために。
だが、ゴーゴリはトンネルに行って、帰ってくることはなかった。
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颯貴@東方&文スト大好き人間(プロフ) - 四葉のコトリさん» コメありがとうございます!幻想郷vsヨコハマは私の自己満妄想なので、喜んでいただけてとても嬉しいです…。稚拙な素人ではありますが、これからも読んでいただけると嬉しいです!! (2022年1月14日 19時) (レス) id: 61e081417a (このIDを非表示/違反報告)
四葉のコトリ(プロフ) - 初コメント失礼します!Pixiv見てたら見つけたので来ました!幻想郷をヨコハマが戦うなんて夢のようです!更新頑張ってください!応援しています!文章とても分かりやすいですね!長文失礼しました。 (2022年1月13日 2時) (レス) @page28 id: 9e21ae10ce (このIDを非表示/違反報告)
颯貴@東方&文スト大好き人間(プロフ) - ねこルージュさん» おk、すまねえ…。できたら教えてちょ (2021年12月19日 23時) (レス) id: 61e081417a (このIDを非表示/違反報告)
ねこルージュ - あ、ビビッドアーミーってやつやってるんだけど、その時の名前がこちらなのでyunanaからこれにかえま〜す (2021年12月19日 21時) (レス) id: f9dc735e37 (このIDを非表示/違反報告)
ねこルージュ - ありがとありがと。小説は少々お待ち下さいね〜。ツイステ六章で推しが弱るシーンを本能のままに書きなぐってるとこです…では、かけたら言うわ。 (2021年12月19日 21時) (レス) id: f9dc735e37 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯貴@東方&文スト大好き人間 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/MizuhasiSatuki/
作成日時:2021年9月28日 19時