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───気をつけなければ。
青娥の脳内に警鐘が鳴り響いた。
彼は、今まで会ってきたすべての強い人間すら余裕で退けるほどの実力を持っている。
彼の光を受け入れない瞳を少しでも見つめ込んでしまえば、底なし沼にこの体を引き摺り込まれそうだ。
彼の操心の沼に入れば最後、散々使われた挙句二度と這い出ることはできないだろう。
唇から紡ぐ台詞、指先の動き一つ、ため息ひとつが命取り。
一歩間違えれば、助かるのは難しい。
彼女の脳内に一抹の不安がよぎる。
だが、すぐその思いは霧散した。
───そんなの、昔から変わらないじゃない。
今更、こんな儚い人間如きに何を怖気付き、何を画策すると?
私は大邪仙の青娥様よ?
こんな人間如き、皮をかぶるに値しない。
自由が私のモットーだ。
例え己の行動が周りをどう不幸にさせようとも関係ない。
ここには私が行きたいと願ったからここにいるんだ。
自分にも他人にも、指図されるのは性に合わないわ。
周りを散々引っ掻き回して、一人高みに見物と洒落込むのが私の性でしょ?
自分らしく、思いのままに動きましょ。
「………嵐の気配を感じたから、かしらね」
───かえって、青娥から返ってきた答えはあっけらかんとしたものであった。
「貴女のような人間が、そうそうどうでもいいことに首を突っ込むとは思えませんが」
「あら、私のこと随分高く見てくれてるのね?」
「亀の甲より年の巧、という言葉が東洋にはあるのでしょう?」
互いに強気な態勢を崩さず、両者そのまま譲歩することなく話が続く。
完全に蚊帳の外となったこいしが面倒臭そうな顔をし始めた時だった。
「───貴方は、今ヨコハマで何が起こってるかご存知でして?」
このままぐだぐだと話が続くと思いきや、不意に青娥が話を振った。
「…………」
彼は、彼女の出方を伺うように閉口した。
「今、ヨコハマに新たな勢力が侵攻しているのよ」
「…………」
「貴方もご存知でなくて?」
青娥の瞳が訝しむように彼を突き刺す。
「ええ、勿論知っています。
ゴーゴリやポートマフィアを襲ったのも貴方たちの連中でしょう?」
「ご尤も」
「そして、天空カジノを襲ったのも」
ドストエフスキーの一言で、その場は水を打ったようにしんと静まり返った。
「───まぁね。
と言っても、一つ訂正したいのは私は紫と同じ派閥じゃないわよ」
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颯貴@東方&文スト大好き人間(プロフ) - 四葉のコトリさん» コメありがとうございます!幻想郷vsヨコハマは私の自己満妄想なので、喜んでいただけてとても嬉しいです…。稚拙な素人ではありますが、これからも読んでいただけると嬉しいです!! (2022年1月14日 19時) (レス) id: 61e081417a (このIDを非表示/違反報告)
四葉のコトリ(プロフ) - 初コメント失礼します!Pixiv見てたら見つけたので来ました!幻想郷をヨコハマが戦うなんて夢のようです!更新頑張ってください!応援しています!文章とても分かりやすいですね!長文失礼しました。 (2022年1月13日 2時) (レス) @page28 id: 9e21ae10ce (このIDを非表示/違反報告)
颯貴@東方&文スト大好き人間(プロフ) - ねこルージュさん» おk、すまねえ…。できたら教えてちょ (2021年12月19日 23時) (レス) id: 61e081417a (このIDを非表示/違反報告)
ねこルージュ - あ、ビビッドアーミーってやつやってるんだけど、その時の名前がこちらなのでyunanaからこれにかえま〜す (2021年12月19日 21時) (レス) id: f9dc735e37 (このIDを非表示/違反報告)
ねこルージュ - ありがとありがと。小説は少々お待ち下さいね〜。ツイステ六章で推しが弱るシーンを本能のままに書きなぐってるとこです…では、かけたら言うわ。 (2021年12月19日 21時) (レス) id: f9dc735e37 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯貴@東方&文スト大好き人間 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/MizuhasiSatuki/
作成日時:2021年9月28日 19時