【文スト×東方】第二篇この余白はそれを書くには狭すぎる。 (ページ9)

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「………幸田さんとの通信、途切れました」

暗い室内、樋口の絞り出すようにして告げられた死亡報告。

それに広津は静かに頷き、銀は悔やむ上司にほんの同情を見せ、立原は奥歯を噛み締めた。

「入口は全滅…か。なかなかのやり手のようだ」

広津がそう呟き、手袋を正した。

「芥川先輩が来るまでの時間稼ぎです。
この二階フロアは、彼らの仇とともに命をかけて守って見せます」

赤い瞳を殺意に燃やし言った上司に対し、3人は静かに頷いた。

「おお、やっと中ボスのお出ましかァ？
待ちくたびれたもんだぜ」

二階の扉を荒々しく突き破った早鬼は、ニヤリと笑った。

全員は早鬼のその人間離れした姿に驚くも、すぐ臨戦態勢となった。

先に動いたのは、広津だった。

近くに落ちていたタンスを振り上げ、異能を使ったのだ。

───異能力【落椿】───

ベクトル反転されたタンスは勢いよく早鬼目掛けて吹っ飛んでいく。

「うおっと！
……あいつらみたいなもやしじゃあねェみたいだな」

早鬼はぱしりと鉄鋼を握り、床へと投げ捨てた。

その怪力にわずかに広津が目を見開く。

「安心しろ、ちゃーんと女には気ィ使うよ」

そう言った瞬間、音速の速さで風が舞う。

「───ッッ！」

彼女の蹴りが、しっかりと広津の腹に食い込んでいた。

「吹っ飛びな、ジィさん」

早鬼はそう言うや否や足を勢いよく回した。

轟音を立てて広津が壁に打ち付けられる。

「まずは一体…っと」

入口担当の幸田の調べで、飛び道具や銃が効かないことは判っている。

それはつまり……こちらにほとんど打ち手がないということ。

此処にいる中で一番強い広津がわずか一蹴で落とされた。

それは、彼らの戦意をより消失させた。

「っ……銀、姐さん、下がってろ」

銀が刃を握り突入しようとしたところに、立原が待ったをかける。

「銀は芥川さんを至急呼んでこい。
これは俺たちが相手できるもんじゃねぇ。
姐さんは今すぐ首領に報告だ。
時間稼ぎは俺がやる」

そういって、落ちていた鉄パイプを握りしめる。

「女の顔に傷をつけるわけにゃあいかねェだろ？」

背後を振り返りニヤリと笑った立原に、2人は逡巡したのち上の階へと走り出して行った。

「おおっと、お前さんの相手は俺だぜ？」

不敵に笑う立原に早鬼も満足げに笑った。