来訪者 ページ25
或る、よく晴れた日。
探偵社の扉が、荒々しく開かれた。
現れたのは、少年とも見紛う小柄な男。黒いスーツに、黒い帽子を被っている。
男は入るなり、よく響く声で要求した。
「夜月Aって女を出せ。ここで事務員をやってる筈だ」
「ええと、どのような御用件ですか?」
1番入り口の近くにいた谷崎が、驚きを営業スマイルで取り繕って接客に行き、続けて国木田も向かう。
粗暴な客人は、応接スペースへと通された。
「俺は、ポートマフィアの
唐突な
── 中原中也。
かつて、太宰治の右腕としてポートマフィア最高幹部の名を冠していた人間だ。
その通り名は、『重力使い』。重力のベクトルを操る、強力な異能の持ち主。
そして。
「現在の、ポートマフィアマフィア、最高権力者……」
国木田の声は、硬い。
「よく知ってんじゃねェか」
客人── 中原はニヤリ
「そんな奴が、何で探偵社に── 」
谷崎も、警戒体制に入る。
だが、意外な事に、中原は快活に笑って云った。
「戦争しに来たわけじゃねェ」
昔を懐かしむように
「首領が死んでもう、1年だ。組織内でのいざこざも落ち着いて、ようやく俺も、手前の都合で動けるようになってきた」
どういう事だ?
首を傾げる国木田と谷崎。
中原は、再び瞼を開き、その目で2人を捉えた。
その
「もう一度云う。夜月Aを出せ。話したい事がある」
谷崎は、国木田の方を見る。
どうしますか国木田さん。知らなかったとはいえ、夜月さんと亡くなったマフィアの首領って交流があったみたいですし……
国木田も、谷崎を見返す。
いくら何でも、能力者でもない事務員の夜月とマフィアのトップを引き合わせる訳にはいかんだろう!!相手は重力使いだぞ!
ええっ、でも国木田さん、この状況で断れませんよ!
暴れられたらまずい、どうにか穏便に返す、それしかない!
無理ですよ!!
二人の心の中で会話がされている、正にその時だった。
「それなら、屋上にでも行きましょうか」
Aが、まるで今から散歩にでも行くかのように、奥の事務スペースから歩いてきたのだ。
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綺月(プロフ) - やっつーさん» ありがとうございます。長い自粛生活もそろそろ終わりが見えてきました。スピードは落ちると思いますが、これからもよろしくお願いします! (2020年5月20日 16時) (レス) id: c6edb3b0cf (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - 桜の下さん» ありがとうございます!作品、拝読させて頂きました。お互い頑張りましょう! (2020年5月20日 16時) (レス) id: c6edb3b0cf (このIDを非表示/違反報告)
やっつー(プロフ) - 完結おめでとうございます!これからも健康に気をつけて、頑張ってください! (2020年5月20日 13時) (レス) id: 7ab3b51d33 (このIDを非表示/違反報告)
桜の下(プロフ) - 完結おめでとうございます!とてもいい作品でした!ありがとうございました! (2020年5月20日 12時) (レス) id: 28ae7de14c (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - コメント、ありがとうございます。設定や表現は、beast本編を読み込んで、自分らしさと文ストらしさを出そうと作っていった物なので、そう言っていただけて嬉しいです! (2020年5月20日 10時) (レス) id: 25e76864a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綺月 | 作成日時:2020年4月19日 15時