『こころ』 7 ページ16
『恋は罪悪ですか?』
今読んでいる、この本の主人公『私』に問いかけられたように錯覚した。
問いかけたのは、目の前に座る教え子だとわかっているのに。
『女生徒』を貸した時のように、きらきらと楽しそうに目を輝かせる彼女はいない。むしろ、困ったような、悩んでいるような、そんな表情。少し暗いとも感じられる。
だけど、
ただ純粋に、前だけを向いて悩むことが出来るのは、限られた時間の中でしか許されない。
そんなに不安そうに僕の方を見ないでください。僕だって不安ですよ。
恋は罪悪か。なんて、人それぞれでしょうけど、僕に言わせたらそんなの一つしか無い。
許されないことですから。
「そうですね」
彼女は、笹草さんは、何を思って聞いてきたのかはわからないけれど。
僕は貴女のためにも、肯定してはいけないし、出来ないんです。
嘘をつくのは、いけないことなので。
しらじらしいと、自分でも思いますが、それでも嘘はつきたくないんです。
罪悪を否定して欲しいという自分を忘れずに、それでも、それは間違っているとわからないといけないんです。
上書き保存では無くて、新しいファイルを追加するように。
「恋は、罪悪ですよ」
僕の恋は、戒めても言うことを聞きそうにありませんけど。
もうすぐ夏休みで、貴女と会える機会が無くなってしまうので、
今のうちに、感想文に夢中の貴女を眺めていても良いですか?
『こころ』 完
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作者名:みい x他1人 | 作成日時:2017年5月25日 20時