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『こころ』 2 ページ11

『こころ』の主人公の『私』と、『先生』が出会ったのは、丁度今のように暑い夏の日だった。

海で『私』が海水浴をしているときに、『先生』を見かけたのだ。最初は『私』が『先生』に気づいていただけで、『先生』は気づいていなかった。それに『先生』は非社交的だった。初めて二人が話したのは、『先生』が落とした眼鏡を『私』が拾ったときだった。『有難う』と先生が言っただけだった。

あれ、なんかこの会話、デジャヴ。

そういえば、私が先生と初めて会ったときも、先生が私に気づいていただけで、私は気づいていなかった。それに、私も非社交的だった。初めて私たちが話したのも、私が本を取ろうとして落としてしまった眼鏡を先生が拾ったときだった。「ありがとうございます」と私が言っただけだった。

『私』と『先生』は海で出会ったけれど、先生と私は図書室で出会った。

こんな偶然、あるものだろうか?

眼鏡を拾ってもらうことは、世間一般的に見ても普通でありふれた出来事だし――――出来事なんて大袈裟なものでも無いだろう――――本の世界でだって、よくあるシチュエーションだろう。

だけど、そういう本が、同じような出会い方をした人に読まれるのは、偶然?

それとも、『こころ』を全部読んだことのある黒子先生が、わざと私に薦めた?

どっちなんだろう。

気になるところだけど、このことを聞くのはやめようと思った。

休日、日曜日の午後二時。

締め切った窓とカーテンの外から聞こえてくる蝉の鳴き声に、カーテンを少し手前に引っ張って、窓とカーテンの間に顔だけのぞかせる。

学校の図書室から見たときより、少し高い感じがする。

ああ、図書室のある三階より、このマンションのこの階の方が高いところにあるんだから、当然か。

また、どこにいるかもわからない蝉を恨めしく睨んでから、読みかけの本へ戻った。

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作者名:みい x他1人 | 作成日時:2017年5月25日 20時

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