今世もあなたの恋人になりたいのです (ページ8)

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8 大切な人 Sirius said ページ8

Sirius said

最初は仕方がなく引き受けた話だったが、彼女との時間は思っていたよりも有意義なものだった。

彼女は知識に富んでいたし、他の女のように媚びるような真似もしてこなかった。
特に彼女の口から語られるマグルについての話は、どれも興味深かった。

週に1度の空き教室での交流が何度目かになる頃にはすっかり打ち解けて、お互いにファーストネームで呼び合う仲になっていた。

「マグルは病気や怪我をしたらどうするんだ？」
ある日、興味本位でそう訊ねるとエラはどこか楽しげに答えてくれた。

『もちろん、薬を飲むのよ。他にも治療法はあるけど大抵は薬を飲んで治療するわ。』

「へぇー魔法もないのに、薬なんて作れるんだな。｣

『確かに、魔法薬より効果は劣ると思うけど…同じような効能の薬もたくさんあるわよ。それに何より味が魔法薬よりずーっとマシなの。』

「そりゃあ、いい。エラは薬に詳しいのか？」

『そんなことないよ。こんなこと、マグル生まれなら誰でも知ってる。けど…もし私が他の人より薬に詳しいなら、私の父が薬品会社を経営してるからかも…』

「へぇ、そうなのか。」
『うん、そうなんだ…』

それは彼女が口にした初めての家族の話だった。
なんとなく察していたが、家族とあまり上手くいってないようだ。
そう言って笑った彼女はどこか寂しげだった。

俺は、それ以上は何も聞かずにただ黙って彼女の手を握りしめた。
そうして過ごすうち、いつしか俺は彼女と過ごす時間を待ち遠しく感じるようになっていた。

魔力酔いが改善されてきた彼女は、以前に比べて積極的に友人作りに励んでいるようで、何人かの女子と過ごすのをよく見かけるようになった。

俺も普段はジェームズたちと過ごしているから、週に1度に会う以外は特に接点もなくただの先輩後輩のように過ごした。

けれど、ふと廊下ですれ違った時に目が合うと、彼女は目を細めて嬉しそうに笑うようになった。
それを見ると俺は何だか浮き足立つようなソワソワした気持ちになるようになった。
彼女のサファイアのような瞳が俺を好意的に映すのを見るのがたまらなく嬉しかった。