[◇]先輩と逢瀬を重ねて

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Aさん視点


心なしか綺麗な頬を赤くして
苦笑いする御幸先輩｡


あ「重症……風邪ですか?」
御「違う違う､こっちの話」


くしゃっと笑って誤魔化される｡

その笑顔にまた何も言えなくなって｡



あ「教えてくれないんですね」
御「教えない」
あ「もう…」


若干､拗ねながらPCに視線を戻す｡


御「怒っちゃった?」
あ「怒りました」
御「ごめんな」
あ「…許しませんから」


ちょっと焦らせたい気持ちで
ごめんを連発する彼を無視しまくる｡


御「ごめんって」
あ「やです」
御「機嫌直してよ」


別に機嫌は悪くないんですよ｡
ただ､貴方の余裕の無い顔が見たいだけ｡



私ばっかり､どきどきさせられて


・






・




＿＿＿＿そんなの悔しいですもん｡



御「………手嶋」
あ「え…！」


熱い吐息と共に､低い綺麗な声で
耳元で私の名前を呼ぶ先輩｡



吃驚して視線をそちらへ向けると
目と鼻の先に先輩の顔があった｡



御「機嫌なおして」



・


黒縁眼鏡のレンズ越しに

少しの熱を持った瞳が私を見詰めてる｡



あ「………あの…」
御「手嶋」


その余裕を崩したかったのに
余裕を崩されてるのは私の方で｡


・


心臓が大きく跳ね上がると共に

顔が発火したみたいに熱くなった｡



あ「仕方ないですね…」
御「やった」


パタパタと手で顔を仰ぐ｡
大分､顔の火照りは治まってきた｡


御「手嶋顔真っ赤」
あ「先輩だって赤かったです」
御「うそ」



ｷｰﾝｺｰﾝ…ｶｰﾝｺｰﾝ……


御「あ､予鈴」
あ「図書室閉めないと……」


立ち上がってクーラーを切る｡

私と先輩の為だけに使ってたと思うと
ちょっと贅沢した気分になる｡


御「パソコン､電源切るぞ」
あ「あ､ありがとうございます」


ここの図書室が開くのは2限後の
休み時間とお昼の時間帯だけ｡



御「手嶋､昼何処で食うの?」
あ「勿論ここですよ?」
御「じゃあ来るわ」
あ「別にい……」


と言い掛けたところで止まる｡


・

あ「やっぱり…来て､下さい」

御「！」


驚いた様に目を丸くする先輩｡
ほんの少しだけ､また顔を赤らめる｡



御「まさか来てって言われるとはな」
あ「クーラー点けときますので」


まだその余裕を崩せてない｡
第一､御幸先輩のこと全然知れてない｡



御「素直になったじゃん」
あ「先輩､顔赤いですよ」
御「クーラー切ったからだよ」



そう言って､私から顔を背ける｡


・


あ「…先輩こそ､素直になればいいのに」

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