#66. ページ16
『…』
「テンション低いな」
「ヒャハ、鳥肌立ってるぜ」
翌日、今日もいつもと変わらない野球部の朝練を見て授業を受けて
そして返された小テストの点数に絶望して、昼飯で罰ゲームを受けている。
本当に僅差、俺がビリでこんな寒い中冷やし中華を食べる事になった。
そして昨日と同様、倉持のパーカーをセーターの上から着込み、俺のブレザーを羽織っている。
御幸には悪いからと家から着てきたものだ。
『自分でもわかる鳥肌…』
「ほんとだ、頬に鳥肌立ってる」
「しょうがねぇから俺らも食うか」
大きなため息をついた倉持。
俺の隣に座り小皿に分けて食べ進めていく。御幸も渋々ながらに食べてくれる。あっという間に俺の皿に乗っていた冷やし中華は空に、倉持と御幸には鳥肌が立っていた。
トレイに小皿も乗せ、返却口へ。
『鬼みたいな罰ゲーム考えた奴がへたばってんなよ』
「食う予定じゃ無かったのによ…」
『自分から食べてくれたじゃん、感謝してるぜ』
「ああ寒…Aマフラー貸して、」
腰を上げた2人、御幸は着込んで体温の高い俺にピッタリくっつきそうお願いしてきた。
昨日、こいつに問われた欲しい物。2つも答えろと無茶振りが来たが、返信に1時間かかりながらも〈充電器、筆箱〉と何とか捻り出した。
〈なんかしょうもない物ばっかだな〉と返信が来た為、そのまま何も返さず眠りについてしまった。
3人長く寒い廊下を歩き、教室に戻る。机横にかけていたカバンからマフラーを取り出して御幸に投げ渡す。
「温かい、」と首に巻いては満足そうに緩んだ表情を見せ、自分の椅子に腰を下ろし俺の机に頬杖をついた。
「てか、充電器と筆箱ってなんだよ」
『そのままだよ』
「なんかこう…服が欲しいとか、靴が欲しいとか無い？」
『兄貴のが余ってるから特には』
「お下がりか…」
頭を抱える御幸、倉持も小さくため息をついた。そんなにため息ついてたら幸せが逃げるぞ、なんて心の中で呟きながら2人の様子を眺めていた。
「まぁいいか、それが欲しいんなら」
「物欲無いから返事に期待はしてなかったけどここまでとはなぁ…」
何とか納得しようとしている2人、物欲が無いのは自分でも分かっている。
でも、直せないしやっぱり欲しいもの特にこれといったものは
…いや、1つあったな。
2人が欲しい、なんてクサイ事言ったら絶対に笑われるだろう。
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作者名：宮
| 作成日時：2022年8月3日 1時
