#62. ページ12
最近、半袖じゃ肌寒く周りも合服や冬服に衣替えをしている
俺が席から見ていた木も葉っぱは茶色に、そして全て風に煽られ地面に落ちていってしまった。
明日からシャツを長袖に変えてこよう。そう思いながら提出期限間近の課題をせっせと進める。
時折シャーペンを動かす手が止まり頭を回転させ、結局分からないから近くにいたクラスメイトに教えて貰って。
「あー疲れた」
ガラッと扉の開いた音がした。
集中していたのに、その音と声で一瞬にしてスイッチがオフになったようにやる気と気力が無くなる。
入ってきたのは倉持と御幸、部活が終わったのだろう。
席が俺の前、あの時恥ずかしさで逃げても結局は近くに2人は来てしまう。
「お前不意打ちはひでぇよ」
『皆の前で言う事じゃなかったろ』
「ほんと、俺への当てつけにも程があるぜ」
『そういう事じゃねぇよ』
学祭の事をまだ引き摺っている2人。
なんなら挨拶と同じ感覚で頬や額に軽いキスをしてくるまでになってしまった。ハグとかならまだしも、なぜよりにもよって。
ふと、俺の手元を見た御幸。
荷物を下ろして背もたれ側に体を向けて腰を下ろすと、俺の机に頬杖をついた。
倉持もそれに気付いたのか、椅子を引っ張ってきて横に座る。余計に課題がしずらくなってしまった。
「分かんねぇの？」
『いや…お前ら入ってきたら集中切れて』
「はは、じゃあ手伝ってやるからしようぜ。それ今日提出だろ」
「お前は終わってんのかよ」
「一昨日くらいにしっかり。」
3人でここはこう、これは違う、と意見し合いながらホームルームまでに全部終わらせることが出来た。3人真剣になりすぎてあと少しで頭同士がぶつかるであろう距離まで近付いていた。
「お前ら3人ってそういう関係なの？」
俺の隣の席の男子が、ふいに話しかけてきた。
驚いたように3人でクラスメイトを見る、不思議そうに首を傾げたまま御幸の方と目が合っている。
「いや、多分距離が近いだけだぜ」
「そう？グラウンドの所でキスしてたじゃん」
「あれ挨拶」
「外国じゃないんだから」
意外にも気持ち悪がる人間は周りにいない。言い訳にしか聞こえない御幸の返答にも軽く笑いながら返してくれるクラスメイト。
恵まれてるなとその時心の底から思った。
課題を机にしまい、少し談笑した後担任が入ってきたので皆それぞれの席についた
まだ秋だってのに着込む先生、寒がりにも程がある。
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作者名：宮
| 作成日時：2022年8月3日 1時
