#63. ページ13
『寒くね？！秋だぜ！？』
「冬に近づいてんだろ」
『こないだ夏休み終わったんだぞ！？』
「こないだってもう3ヶ月は経ってるぜ」
『時間の流れはやい…』
学祭から数ヶ月
すっかり冬服に衣替えが完了した頃外に一歩出ると北風がセーターを突き抜けて肌に攻撃してきた。
マフラーを巻いても耳は出てるし防寒も無意味に終わる。
御幸も赤いマフラーを巻いていたが、鼻が赤くなって白い息を吐いていた。
だけど、そこまで体が冷えるという事は無いらしく平然と寒がる俺を呆れた顔で眺めている。
倉持は寒くても相変わらず元気だ。カイロを貸してくれて、俺を2人の間に挟みおしくらまんじゅう状態で下駄箱へ向かう。
運動部は暑い日も寒い日も外だから凄い。狂気の沙汰、俺は1日で挫折する。
『体温高い温まる…』
「暑がりで寒がりとか大変だなお前」
「俺下に防寒インナー着てるし、上貸そうか」
先に上履きに履き替えた倉持の背後から腹に手を回し、隙間無くピッタリくっついていると、最後に履き終えた御幸が問いかけてきた。
俺が返事をする前にブレザーを脱ぎ、俺の肩に掛けてくれる。
少しだけ肩幅のデカいそのブレザーに袖を通し、室内だからとマフラーを外した。
『…まじでお前寒くねーの？』
「寒くないぜ、インナー着てて良かったわ」
「じゃあ俺はパーカー貸すわ。暑くても着込んどけ」
カバンから取り出される黒のパーカー、手渡され一旦ブレザーを脱ぎパーカーを来た後その上から重ね着た。
シャツ、セーター、パーカー、ブレザーと4枚も重ねていると少しゴワつくが風は一切通さなくなった。
2人に感謝しながらカイロを手に持ち、寒かったはずの廊下をウキウキで歩き階段も上って教室へ向かう
「…太った？」
『着込んでる！まじあったけぇの』
「寒いしなぁ、…って、そのブレザー御幸のかよ」
『そう、貸してもらった。パーカーは倉持の』
「お前が羨ましいよ」
2人より一足先に教室へと足を踏み入れ、自分の席へカバンを置いた。
隣の奴は後から来たシャツの御幸を見て察したらしく、俺に問いかけてくる。
「お前先に行くなよ」
「温かいからって浮かれすぎだわ」
『いい匂いはするし、温かいし一石二鳥でよ。これはもう浮かれるわ』
「またサラッとそういう事言う」
コツンと倉持に頭を小突かれるが、どことなく嬉しそうな表情をしている。コロコロ変わる2人の顔は見ていて楽しいし大好きだ。
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作者名：宮
| 作成日時：2022年8月3日 1時
