#60. 倉 side ページ10
『どうしてくれんだ、ちゅーするのが癖になったら』
「したらいいじゃん、いつでも口はあいてんだし」
「ヒャハハ、俺らは大歓迎だぜ？」
『…あっ、そう。じゃあそうするわ』
荷物を持って門までの通路を歩く
見送りは校門まででいいや、というAの要望に応えるため。
すっかり真っ暗になった空、星がいくつも光って月も道を照らしてくれる。
『じゃあまた明日』
「おう、気を付けて帰れよ」
「足元はしっかり見ろよ、暗いとフンに気付かねぇから」
『いつの話してんだ』
ヒラヒラと手を振り走って帰って行ったA。見えなくなるのも早く、踵を返して寮へと向かった。
今日1日馬鹿みたいに出来事が多かった気がする。Aはサボるわ、倉庫でキスするわ、最後は御幸に強引にされてるわ。
何が2人で話していた時もあったが、俺はなんの会話かさっぱり分からない。
「お前ら2人で何話してたんだよ？」
「ん？気を付けろよって話を少し。男は女が好きな奴以外もいるって」
「俺らみたいな？」
「そう。亮さんからも前怒られたし、アイツには分からせとかねぇと危ない。何があるか分からない」
「まぁ確かに、メイド服とかフラグだもんな」
そんな話をしているとあっという間に寮へと付き、その場で御幸とも別れた。
1人部屋のあいつ、階段を上る前に亮さんに捕まっていた。バレないようにそっと部屋に戻り、荷物を床に放り投げる。
「遅かったっすね」
「A達と話しててよ。これやる」
「…メイド服…」
「あいつ『要らないから沢村にでも着せてあげて』ってさ」
「いや俺着ないですよ？！」
広げたメイド服、仕方ないからハンガーにかけて壁に飾っておこう。特になんの理由もないが、折りジワが付くより綺麗なままの方がいいだろう。
あいつが遊びに来た時にまた着せて遊べばいいし。
同室の2人は風呂に入ったらしく、俺は服を持って風呂へと向かった。
丁度疲れきった顔をした御幸と遭遇、少し待って一緒に風呂に行くことに。
「亮さんに怒られた」
「またかよ」
「多分あの人も結構Aを気にしてるんだと思うんだよな。会う度「瀬乃は？」って聞いてくるし」
「ヒャハ、あいつすげーな」
「今回の事は知られてなかったけど、メイド服だけは殴っても怒られても止めないとって言われた。」
「…なんだよ、今回の事って」
少し引っかかる。問いかけると御幸はハッとした表情になり、小さいため息を1つ。「風呂で話すわ」と答えた。
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作者名：宮
| 作成日時：2022年8月3日 1時
