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莉犬さんの温かい腕の中で、子供みたいに泣いた。


ずっと泣いていれば涙が切れるか泣き疲れるかして自然に泣き止むと思っていたのに、なぜか止まらなかった。莉犬さんが着ている服に、私の涙がしみを作っているのを見て、ちょっと慌てた。

ハンカチを出すためカバンを引き寄せようとして、思いのほか莉犬さんの抱きしめる力が強いことに気づく。でもその腕を解かせてしまうのはなんとなく勿体ない気がして、私はそのまま泣くことを選んだ。


莉犬さん困っちゃうなとか、最近私情緒不安定だとか、あいつ恵菜さんばっか構いやがってとか、恨み言や反省をする思考の隙間で、なんで莉犬さんはこんなに温かいんだろ、失恋した人だからかな、なんてことを考える。


このままずっと、この腕の中にいられればいいのに。

そう思うのに、それはできないと言っている自分もいる。失恋という共通点で繋がっている私と莉犬さんは、友達とも恋人とも違う関係の間で揺れ続けている。そしてそれは、多分これからも同じだ。



ひとしきり泣いて、泣くと気持ちが落ち着いてきて、私は顔を上げた。それに応じて莉犬さんが腕を解く。顔を合わせるのが気恥ずかしくて、すぐにハンカチで涙を拭くふりをして顔を覆った。



「……なんで好きになる人って、ひとりしかいないんだろうね」



ぽつんと呟きが聞こえて、ハンカチ越しに莉犬さんを見る。莉犬さんは、いつものまっすぐな目でどこか遠くを見ていた。



「物だったら同じものいくつでもあるのに、人はこの世界にひとりしかいない。この人が欲しいって思った人がたくさんいたら、取り合いになる」

「……同じこと考えてました」



ふっと莉犬さんがこちらを見る。

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作品ジャンル:恋愛
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(プロフ) - みかささん» ほんとですか?!ありがとうございます!だんだん少女漫画チックになってきてて困ってます……シリアスはどこいったんだ…… (2020年8月10日 12時) (レス) id: d3d4d4d9f7 (このIDを非表示/違反報告)
みかさ(プロフ) - 最後のりいぬくん登場かっこよすぎます! (2020年8月10日 11時) (レス) id: d74848b20e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - きずなさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます! 三分くらいコメント眺めてにやにやしてました() 夏休み中に完結できるよう頑張ります! (2020年8月2日 12時) (レス) id: d3d4d4d9f7 (このIDを非表示/違反報告)
きずな - 凄い良かったです更新まってます。 (2020年8月2日 11時) (レス) id: 56f6207354 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ありがとうございます!初投稿なんでめちゃくちゃ動揺してます……面白いと言って頂けて嬉しいです! (2020年8月2日 6時) (レス) id: d3d4d4d9f7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年7月30日 21時

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