神さまの歯車 ページ45
本当の、理由?
頭の中で呟いて、もやもやと考える。
莉犬さんが彼の代わり、なんて。そんなこと考えられない。
だって、私は彼のことさえ、青柳先輩の代わりとして見ていなかった。
知らないうちに、私は彼をひとりの人間として見ていて、好きになってしまっていた。
欠点とか長所とか、そんなもの関係ないくらいに、彼の存在そのものが好きだ。
例えばもしさっき、カフェを通りかかったのが莉犬さんでなくて彼だったら、きっと彼は「彼氏でもないから」と言いわけして見て見ぬふりをしたのだろう。彼はそういう人だ。
でも莉犬さんは、ちゃんと助けてくれた。遊園地で、会いたい人に引き合わせてくれた。漫画のヒーローみたいに。
それでも私は、彼のそんなところも、嘘がつけなくて馬鹿正直に全部話しちゃうところも、女慣れしてそうなのに意外とそうでもないところも、何年も報われない想いを持ち続ける泥臭さも、全部「彼だから」好きだ。
たとえ彼より完璧な人がいても、そっくり同じ要素を持っている人がいたとしても、どちらも彼の代わりにはならない。
愛しい人の代わりなんて、どこにも存在しない。
青柳先輩の代わりに、自分を愛してくれる人を求めていた私にそう教えてくれたのも、皮肉にも彼だ。
それはきっと神さまが定めたシステムのようなもので、神さま専用の歯車がこの世界のどこかで動いているのだろう。そしてその歯車は、人間にはどうやったって動かせない。
そう思ったら、ふいに鼻がつんとして、涙が出てきそうになった。熱くなる目頭を無視して、私は答える。
「私は」
恐る恐る両足で立とうとする赤子みたいな気持ちだ。これを言ったらもう、自分を誤魔化せなくなる。でも言わないと、進めない。
莉犬さんの真摯な目を信じて、涙を引っ込めるように、深く息を吸い込んだ。
「私は、彼のことが好きなんです。代わりの人はいません」
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紬(プロフ) - みかささん» ほんとですか?!ありがとうございます!だんだん少女漫画チックになってきてて困ってます……シリアスはどこいったんだ…… (2020年8月10日 12時) (レス) id: d3d4d4d9f7 (このIDを非表示/違反報告)
みかさ(プロフ) - 最後のりいぬくん登場かっこよすぎます! (2020年8月10日 11時) (レス) id: d74848b20e (このIDを非表示/違反報告)
紬(プロフ) - きずなさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます! 三分くらいコメント眺めてにやにやしてました() 夏休み中に完結できるよう頑張ります! (2020年8月2日 12時) (レス) id: d3d4d4d9f7 (このIDを非表示/違反報告)
きずな - 凄い良かったです更新まってます。 (2020年8月2日 11時) (レス) id: 56f6207354 (このIDを非表示/違反報告)
紬(プロフ) - ありがとうございます!初投稿なんでめちゃくちゃ動揺してます……面白いと言って頂けて嬉しいです! (2020年8月2日 6時) (レス) id: d3d4d4d9f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紬 | 作成日時:2020年7月30日 21時