舌なめずり ページ39
「えっとねえ、僕ただの知り合いじゃなくて、……んー、腐れ縁? とまではいかなくても、まあそれに近い間柄なんですよ」
「……そうなんですか」
「うん。石崎さんのことも知ってる」
石崎さん、という言葉が、『恵菜さん』という人名に変わるまで、数秒の時間を要した。
「え」
私が向こうの期待通りの反応をしたからか、先輩が満足そうににやにやした。それに多少むっとして、口をつぐむ。先輩がにやにやを変えないまま、口を開いた。
「Aは恵菜さんに会ったことある?」
「この前会いました、けど」
探りを入れられている気がして警戒しながら答えると、先輩はさらにミルクを入れてコーヒーを飲む。
どこから話したらいいのかな、と思案するように、指をテーブルの上でくるくる回す。
しばしの沈黙の後、青柳先輩は糸口を見つけたというように嬉々として話し始めた。
「Aはさとみくんのこと好きなんでしょ?」
そのセリフに、即座に眉が寄るのがわかった。先輩は全く気にかけずに、話を続ける。
「そして、僕が知ってる限りでは、さとみくんは小学生の頃から石崎さんが好き」
事前に彼から聞いていたからか、その言葉にはあまり嫌悪感は感じなかった。やっぱりそうなのか、と率直な感想が前にきて、それから恵菜さんの顔が脳裏に浮かんで唇を噛む。
先輩は私の反応をいちいち確認しているのかしていないのか、私のイライラを煽るような順番で情報を提示しているような気がしていた。
先輩が唇の端で笑って、最後の料理に手をつけようと舌なめずりをする獣のように、目を細めてこちらを見た。
「それでね、さとみくんが石崎さんのことを好きな理由はね、」
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紬(プロフ) - みかささん» ほんとですか?!ありがとうございます!だんだん少女漫画チックになってきてて困ってます……シリアスはどこいったんだ…… (2020年8月10日 12時) (レス) id: d3d4d4d9f7 (このIDを非表示/違反報告)
みかさ(プロフ) - 最後のりいぬくん登場かっこよすぎます! (2020年8月10日 11時) (レス) id: d74848b20e (このIDを非表示/違反報告)
紬(プロフ) - きずなさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます! 三分くらいコメント眺めてにやにやしてました() 夏休み中に完結できるよう頑張ります! (2020年8月2日 12時) (レス) id: d3d4d4d9f7 (このIDを非表示/違反報告)
きずな - 凄い良かったです更新まってます。 (2020年8月2日 11時) (レス) id: 56f6207354 (このIDを非表示/違反報告)
紬(プロフ) - ありがとうございます!初投稿なんでめちゃくちゃ動揺してます……面白いと言って頂けて嬉しいです! (2020年8月2日 6時) (レス) id: d3d4d4d9f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紬 | 作成日時:2020年7月30日 21時