新月 ページ37
夜がゆっくり進んでいって、分厚い雲の覆っている空が紺色に染まる。小さい星がその間から顔を出し、弱々しい光を放っていた。月はどこかに隠れているようだ。
「新月かな」
莉犬さんも同じことを思ったらしく、車窓を眺めながらそう言った。
「なんか、ありましたよね」
「ん?」
「『月が綺麗ですね』に対する返答で、『私には月が見えません』みたいなの」
「Aちゃんって案外ロマンチストなの?」
「違いますよ。調べたらめちゃくちゃ出てくるんです。言われたことも言われる予定もないだろうに」
「すっごい毒吐くじゃん」
「キスフレ作ってるような人間がロマンチストだと思いますか?」
眠気で頭が回らず自虐的にそう言うと、「今のAちゃん悪酔いしてるみたい」と面白がられた。心外だ。
やがて莉犬さんが乗り換えをする駅に着いて、手を振って別れた。
「じゃあ、また」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみー」
ひらひらと手を振る莉犬さんの後ろ姿を見ながら、早く寝たいなあとそれだけを思った。
久しぶりに素の自分が出ていたと気づくのは、次の日の朝、昨日のことを思い出した時のことだった。
その時初めて、また会いたいと素直に思った。

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紬(プロフ) - みかささん» ほんとですか?!ありがとうございます!だんだん少女漫画チックになってきてて困ってます……シリアスはどこいったんだ…… (2020年8月10日 12時) (レス) id: d3d4d4d9f7 (このIDを非表示/違反報告)
みかさ(プロフ) - 最後のりいぬくん登場かっこよすぎます! (2020年8月10日 11時) (レス) id: d74848b20e (このIDを非表示/違反報告)
紬(プロフ) - きずなさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます! 三分くらいコメント眺めてにやにやしてました() 夏休み中に完結できるよう頑張ります! (2020年8月2日 12時) (レス) id: d3d4d4d9f7 (このIDを非表示/違反報告)
きずな - 凄い良かったです更新まってます。 (2020年8月2日 11時) (レス) id: 56f6207354 (このIDを非表示/違反報告)
紬(プロフ) - ありがとうございます!初投稿なんでめちゃくちゃ動揺してます……面白いと言って頂けて嬉しいです! (2020年8月2日 6時) (レス) id: d3d4d4d9f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紬 | 作成日時:2020年7月30日 21時