ざわめき ページ30
「河井さん、俺に興味ないでしょー」
「え、」
目を見開く。
「試すようなことしてごめんね。ほんとは俺、河井さんの一学年上なの」
「え!」
見破られたという驚きより、年上という衝撃が大きくて、思わず口をあんぐりと開けて莉犬さんを見てしまった。その顔を見て、彼がまた笑う。
「年上には見えない?」
「すいません……」
「いいよ、こっちも責めるような言い方してごめんね。安心した」
莉犬さんの思いがけない言葉に振り返ると、彼は言った。
「涼介、俺のことなんて言ってた?」
「えっと……いつも遅刻しない?」
「そういうことじゃないよー、まあありがたいけど」
Aちゃん面白いなあ、と莉犬さんが言う。
「女性に興味ないふりしてる哀れな非リアだとか、孤独死しそうで心配だとか」
「あー……彼女募集中?」
「それそれ!」
言ってたのは正確には春香だけど、と頭の中で注釈をつけて言ってみると、莉犬さんは髪の毛をぴょんぴょんさせて反応した。犬みたいな人だ、と人によっては若干失礼な印象を持つ。
『彼女募集中』ってさ、誰でもいいみたいで嫌だよね、と文句を言いながらチュロスをかじる彼に、さっきの意味深な言葉の真意を訊いてみた。
「安心した、とは?」
「えっとね、俺彼女にするなら本当に好きな人って決めてるんだけどね、涼介に連れ出されちゃったから。でも相手は恋人作る予定で来てるわけだから、先に言っておかないと失礼かなーって」
ああ、と相槌を打つ。彼から目を離すと、遊園地のざわめきが大きくなったように感じた。
楽しそうに両親の腕にぶら下がる子ども。幸せそうに寄り添うカップル。挨拶をしながら笑顔を弾けさせるスタッフの方。彼とえなさんはもう、どこかに行ってしまったようだ。
その中に、涼介さんと春香の姿もあった。甘えるように腕を組んで、楽しそうに笑い合う。私みたいなはみ出しものを、ぽつんとひとり残すように。
80人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
趣味で歌い手やってたんですが、 2【stpr】
久しぶりに会ったらお兄ちゃんが有名だった件について【すとぷり】【赤色】
もっと見る
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紬(プロフ) - みかささん» ほんとですか?!ありがとうございます!だんだん少女漫画チックになってきてて困ってます……シリアスはどこいったんだ…… (2020年8月10日 12時) (レス) id: d3d4d4d9f7 (このIDを非表示/違反報告)
みかさ(プロフ) - 最後のりいぬくん登場かっこよすぎます! (2020年8月10日 11時) (レス) id: d74848b20e (このIDを非表示/違反報告)
紬(プロフ) - きずなさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます! 三分くらいコメント眺めてにやにやしてました() 夏休み中に完結できるよう頑張ります! (2020年8月2日 12時) (レス) id: d3d4d4d9f7 (このIDを非表示/違反報告)
きずな - 凄い良かったです更新まってます。 (2020年8月2日 11時) (レス) id: 56f6207354 (このIDを非表示/違反報告)
紬(プロフ) - ありがとうございます!初投稿なんでめちゃくちゃ動揺してます……面白いと言って頂けて嬉しいです! (2020年8月2日 6時) (レス) id: d3d4d4d9f7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紬 | 作成日時:2020年7月30日 21時