蛇 ページ23
ずっと黙っているとこちらの気持ちを察したのか、ごめんごめんとまるで思っていないような調子で謝られた。
『別れたってのは確かにそうだね。でもさあ、そっちはまだ僕のこと好きでしょ』
「は?」
断定するような口調に、怪訝そうな声が思わず口をついて出てしまった。それを取り繕うでもなく、私は反論する。
「なんでそう思うんですか、もう随分のことあなたとは会ってません」
『んーじゃあさ、なんで電話掛けてきたの?』
え、と掠れた声が喉の奥からした。それに構わず、彼は続ける。
『メアドも変えた、電話番号も変えた、住所は……まあ変えてないけど僕はそういうことしないってわかってるでしょ? 無視しようと思えば無視できたのにわざわざかけてきたってことは、まだ僕に気があるってことだよね、』
吐息の多めの声が、耳を通って脳を揺らした。毒みたいに全身に回って、蛇のようにまとわりつき、私を動けなくする。寝起きなのに的確なところをついてくる彼が、たまらなく恐ろしい。
知らない、知らない、そんなこと。
いや、知らないんじゃなくて、わからない……?
「そういうことしないって言いましたけど、紙入れたじゃないですか、郵便受けに。うちに来たって、ことでしょう」
やっとのことで出てきた反論を、先輩は笑い飛ばした。
『まーね。ごめん。こうでもしないと会ってくれないと思って』
「会う……?」
嫌な予感がして呆然としたまま復唱すると、彼は言った。
『Aさ。キスフレ作ってるらしいじゃん。そんなことしなくても、普通にキスしてくれる相手、ここにいるんだけどなあ』
目の前が、真っ暗になった。
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紬(プロフ) - みかささん» ほんとですか?!ありがとうございます!だんだん少女漫画チックになってきてて困ってます……シリアスはどこいったんだ…… (2020年8月10日 12時) (レス) id: d3d4d4d9f7 (このIDを非表示/違反報告)
みかさ(プロフ) - 最後のりいぬくん登場かっこよすぎます! (2020年8月10日 11時) (レス) id: d74848b20e (このIDを非表示/違反報告)
紬(プロフ) - きずなさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます! 三分くらいコメント眺めてにやにやしてました() 夏休み中に完結できるよう頑張ります! (2020年8月2日 12時) (レス) id: d3d4d4d9f7 (このIDを非表示/違反報告)
きずな - 凄い良かったです更新まってます。 (2020年8月2日 11時) (レス) id: 56f6207354 (このIDを非表示/違反報告)
紬(プロフ) - ありがとうございます!初投稿なんでめちゃくちゃ動揺してます……面白いと言って頂けて嬉しいです! (2020年8月2日 6時) (レス) id: d3d4d4d9f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紬 | 作成日時:2020年7月30日 21時