嫌いを好きにする魔法。 (ページ16)

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エース「なぁ、こっち見て。」

『ん？』

移動教室が終わり夕日が差しかかる渡り廊下で立ち止まる。

デュースは止まった私達に気が付いていないのかセベクと先に行ってしまった。

エース「目、つぶってくんね？」

『こう？』

エース「目っつーかまゆげんとこゴミついてる。」

『ありがと。』

エース「あ、まだとってねーけど？」

『え！！じゃあ今の何？』

エース「分かんねーの…？」

『馬鹿エース！』

エース「ひっでぇな！」

『早くとってよ！』

エース「分かったから早くつぶれ！！」

お互い照れているから顔が赤い。
今までそんなことして来なかったじゃん！

急にされると意識するから...

クルーウェル「何をしている。」

『ゴミついてたみたいでとってもらってたんです！』

クルーウェル「その割には顔が真っ赤だな。」

エース「あぁ！もうオレ先いくからね！？」

『部活行ってらっしゃい！！！』

走っていく背中を見送る。
ついつい声が大きくなっていた。

クルーウェル「badgirl...声のボリュームを落とせないのか...」

『だっ…急に…』

クルーウェル「歳頃だもんな。俺は否定しないが、程々にしろよ？」

『私はそんなつもりじゃないんで！』

クルーウェル「そういえばお前モストロラウンジに手伝いに行ったって本当か？」

『うん。』

クルーウェル「海...大丈夫なのか？」

『ダメだよ、水槽見ると足が止まった。』

クルーウェル「お前の母親...いや、父親の話もしなくちゃだな。」

『お父様？』

クルーウェル「あぁ、お前が母親を亡くした時から言うか迷ってたんだ。お前の母親は父親の話をしたがらなかっただろう？」

『確かに...何か問題でも？私はずっと病気で死んだって聞いてたけれど、』

クルーウェル「俺の部屋に行くぞ。誰かに聞かれたら不味いからな。」

『はぁい...あ、でもこの後ラウンジ呼ばれてるから。』

クルーウェル「すっかりお気に入りじゃないか。」

『まぁね。嫌いじゃないからいーの。』

クルーウェル「寂しくなるな。」

『は！？デイヴィス大丈夫！？』

クルーウェル「気安く名前を呼ぶな...まだ校舎だ。」

頭を軽く叩かれる。
本当のお父様達の話ってなんなんだろう。

私が海が苦手なのもちゃんと聞きたい。
だって、あの日も海が怖かった気がするし、前にも何かあったんじゃないのかな。

ゆっくりと歩幅を合わせてせんせーの部屋に向かう。