目を射る話-1 ページ3
『カノ。好き』
「うん、僕も好き」
『つーちゃんも、こうちゃんも好き』
「ああ、俺も好きだ」
「俺も好きっす!!」
これは、幼いときの記憶......??
幼い頃は、あんな簡単に"好き"だと言えていたのに。
今は、そのたった2文字を言うコトすら躊躇してしまう。
人間とは、それほどめんどくさい生き物なのだ。
自身の感情を隠し、表面上はヘラヘラと。
しかし、表面下ではドロドロとした汚い感情が渦巻く。
まあ、そんなドロドロとした感情をココロの奥に隠している人間など、私くらいなのだと思うけれど。
ウソつきは、所詮幸せになどなれないのだ。
他者への接触を拒み、拒絶した私には、幸せになる資格など最初から持ち合わせていないのだ。
そんなコト、とうの昔からわかっていたじゃないか。
姉さんを。父さんを。母さんを亡くした時から。
幸せになる資格を持っているのは、バカ正直に生きている者だけ。
私に、そんな資格はない。
本心を嘘で隠し、
嘘を嘘で隠し、
そうして少しずつ、少しずつ。自身を嘘で塗り固めて。
そんな、汚れた。汚い人間が幸せになどなれるハズがない。
幸せになりたかった。幼い頃は幸せだった。
どこで、道を踏み外したのだろう。
そんなの、わからない。覚えてない。
そんな記憶は、自身の能力で消し去ったではないか。
.次回 目を射る話-2.
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作者名:HONEY×BLOCK | 作成日時:2017年5月10日 17時