[短編集]Everyday life with you[wrwrd][完結]

似たもの同士(ut) ページ10

(情事表現あり。閲覧注意)




ふと、空を見上げれば今にも雨が降り出しそうな曇天が広がっていた。

空を覆い尽くすその黒雲は私の今の心境とピッタリで、思わず自嘲気味に笑った。




寂しかった。



誰でもよかった。




自分を慰めてくれるならどんな方法でも良かった。




…ただ、甘えたかった。







「久しぶりだね、今日は大丈夫かい？
ロンリーガール(孤独の少女)」


『…ええ。
あと、何度も言うけどその呼び方やめて』



エスコートのために差し出された手を無視し、
裏路地に入り込む。
如何にも何かしていそうなこの男は
分かりやすくいうと「せふれ」みたいなもの



愛のない、ただ体の欲を満たすだけの関係。





欲を満たすだけなら彼らだっている

彼らに相手をしてもらえばいい話。



けれど、苦しいのだ




汚れきった私がこんなにもぐちゃぐちゃな気持ちで彼らに触れるには、あまりにも綺麗すぎる



彼らには自分たちの色がある
そこに私が触れる度に黒で濁していくような
そんな幻覚まで覚えてしまう



「金貨1枚でいいか？」

『…銀5枚でいいわ』

「！何かあったのか？」




身売りが銀五枚など普通はありえないし
今までだって金一枚でやり取りしていた



けれど、今日はお金などどうでもいいのだ。

寧ろ金一枚の価値が今の私にあると思えない





「…まあいい、俺は何も聞かないでおくよ」



この男の他人に不必要に干渉をしない部分が
存外自分に合っているのかもしれない。






『は、あ…っ』




濡れた音が部屋に響く。
不必要な言葉を交わさずに、男の手が私の肌を伝った。






そういえば、いつも煙草と香水の匂いに包まれた彼とこの宿に来たことがあるなとぼんやりと考えて、私は彼に「早く」と急いた





頭にチラつく彼らの顔を

一刻も早く忘れたかったから。

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