第４話 業と運命 ページ7
腐敗した世界をただ歩く
行く宛てもなく、目的もなく、ただただ歩き続ける
「……」
吸血鬼になってから、世界の全てが違って見える
物は以前より細かい箇所まで鮮明に見えるし、遠く離れた物でも、蝶の羽ばたく音でも、全て感知できる
美しい…美しいものだらけだ
だが、世界を美しく見ることが出来るようになったのと同時に、私は大切なものを喪った
「…感動…できない…」
美しいものを美しいと感じることが少なくなってしまった。これでもまだ少しはそういった感情が残っているが、それもいずれ無くなってしまうのだろう…
「……神よ…私を見てください」
ロザリオに触れ、天にそう語りかける
「私は醜い化け物になりました。仲間は皆死にました」
共に修行し、強くなった仲間は、もうこの世には居ない
「これも…貴方が私に下した試練なのですか？」
神は応えてはくれない
「母だけで…充分ではないのですか？」
母は死んだ、仲間も死んだ、私は吸血鬼になった
「少し…残酷すぎやしないか…？」
神よ、もし貴方が私を見ているなら……
「…助けて…」
こんな…こんなの嫌だ…
抑えていたものが一気に溢れ出す
「くっ…うぅう…」
強くあれと、ひたすらそれだけを貫いてきた
だから、心から泣くのは…久し振りだ
「…神様…」
助けて…殺して…この呪縛から解放してくれ…
独り瓦礫の上で泣いていると、ふいに後から抱き締められた
「……」
クローリーだ
私より遥かに高い背を屈めて、顔を私の肩に乗せている
ク「心配したよ、なかなか帰ってこないから」
…そういえば、もう２日ほど歩いたか…
吸血鬼になってから、時間の感覚がおかしくなった
「…離せ」
ク「やだ」
振り払おうとするが、力では敵わない
暫くの間、私は何もできずにただ抱き締められていた
ク「神を喪いそうなの？」
クローリーが私の胸にかかっているロザリオを掴み、自分の顔の側まで持っていって眺めている
「…神は私を愛してなどいない」
愛しているのなら…せめて此方の問いかけには応えてほしい
ク「…神様はきっと忙しいんだよ」
「吸血鬼に何がわかる」
クローリーはおそらく数百年を生きている。もう人間性など皆無に等しい
ク「君のことなら大体わかるよ」
そんなことを言ってくる
ク「今の君を、君の仲間だった人間達が見たらどう思うかな」
「お前が殺した」
あの日、お前が…
ク「はは、そうだったね」
クローリーはそう言って私を解放した
そして此方を見下ろし、微笑んだ
ク「でも、いずれ忘れるさ」
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InaNyan(プロフ) - 全てよみました。体調に気をつけて下さい。待ってます。 (2018年7月23日 21時) (
レス) id: 7122b96239 (このIDを非表示/違反報告)
依紀 - 今日はじめて読みました！体調のほうは大丈夫ですか……？この作品、とても気に入りました！色々と応援してます！頑張って下さい！！ (2018年4月14日 19時) (レス) id: f149e1f30f (このIDを非表示/違反報告)
★ホームランバッター☆(プロフ) - 朔夜さん» コメントありがとうございます！頑張って更新します(≧▽≦) (2017年1月5日 13時) (レス) id: 471f1caae5 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - すごく面白いです 更新頑張ってください (2017年1月5日 12時) (レス) id: 184ba2587c (このIDを非表示/違反報告)
★ホームランバッター☆(プロフ) - 狼鬼さん» は、はいっ！頑張らせていただきますっ！！(≧▽≦) (2016年10月22日 16時) (レス) id: 471f1caae5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：★ホームランバッター☆ x他1人 | 作成日時：2016年8月31日 19時
