木之本家の朝の一幕 ページ3
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「おはよう。兄さん、お父さん」
私の朝は、学校の支度を終えて下にいる家族に挨拶をすることから始まる。
「ああ、おはようケイ」
寝るのが少し遅かったのだろうか？
桃矢兄さんは少し眠たげに返事をする。
「おはようございます、桂さん。…おや、寝癖がちょっと付いてますよ」
「あっ、ありがとう！」
いつもニコニコ、優しいお父さんの藤隆さんがさっと直してくれた。
「はい、これで大丈夫ですよ。今日も可愛いですね」
「お父さんは昨日よりカッコイイよ」
さらっとタラシこむので反撃するが「ふふ、ありがとうございます」と特に影響はない様子。
…むぅ、天然はこれだから難しい。
まあ、生まれてからの付き合いだからすぐに気分を切り替え、くるりと方向転換して写真立てに近付く。
「…お母さんもおはよう」
───今は亡き母、そして友の撫子は今日も笑顔だ。それが写真だとしても。
それでも本当の彼女は今も見守っていることを私は知っている。この写真と相変わらず、素敵な笑顔を浮かべて。
…いつまでも感傷に浸るのは良くない。名残惜しそうに写真立てに指を添い、離れる。
「お父さん、ご飯の準備手伝うよ」
「おや、ありがとうございます。ではサラダの方をお願い出来ますか？」
「うん、了解です」
ささっと冷蔵庫を漁ってみると、ミニトマトが少ないことに気付いた。今で使い切って新たに買わなければ……レタスの方はまだ余裕があるし、そっちを多めに入れて、キュウリも入れればいいだろう。
けれどこれだけじゃあ味気ない、リンゴも入れよう。余れば普通にデザートとして食べてよし、晩御飯の隠し味とするのもよし、うちの万能の食べ物だ。
決めたらささっと水洗いをしてレタスをちぎって、他は切る。とにかく切る。
キュウリはトゲみたいなイボみたいなのをとる。
ささっと包丁を使う。
そしてまた切る。
切ったのをボウルに全部入れ、今日の朝食の分を皿に分ければ完成だ。
ね、簡単でしょう？ちなみにサラダの余りは弁当の分である。
まあ、私がちんたらしている間にお父さんと桃矢兄さんはいろんな料理を作り上げているわけで……二人とも女子力高くない？
それ抜きにしても、もう少し切る速さをあげたいところである。まぁ今後の課題だ。
……せめて見栄えだけでも良くしたい、くるみとかあれば入れて食感を増やすかぁ……
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