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Aside
『きり丸くん！』
(どうしよう、油断した……！)
倒れかける棚、思いっきり左手を伸ばすけど届かない。
もう駄目だと思った私は、少しでも衝撃を減らそうと、きり丸くんに覆い被さった。
「！」
「Aさん！」
響き渡る、きり丸くんの声。
……しかし、いつまで経っても重いものが落ちて来るような、痛みや衝撃は来なかった。
『……あ、れ』
違和感を覚え、ゆっくりと顔を上げる。
すると、重さに耐えるように眉を顰める立花さんと瞳がぶつかった。
「だ、大丈夫か……」
投げかけられたその問いに、私ときり丸君は顔を見合わせて頷く。
『た、立花さんこそ！』
「これくらい大したことない。そのまま動くなよ、棚を戻すぞ」
『あっ』
ゆっくりと、元の位置に戻される棚。
手伝います、そう言いかけてやめた。
……今の私が出来ることなんて何も無い。
寧ろ、私は立花さんを"巻き込んで"しまったようなものなのだから。
「久作、お前は無事か？」
「はい！僕、委員長を呼んできます！」
(こんなことって……でも、確実に見えた)
目の前で動き続ける皆を、私はただ黙って見つめる。
途中で立花さんに「怪我はしてないか」と聞かれたけれど、私は上の空で頷いた。
.
.
.
＿昼間のあれは、一体なんだったのだろうか。
すっかり夜がふけた頃、私はただひたすらにその事を考えていた。
暫く一人で考え込み、そしてぽつりと呟く。
『……やっぱり未来が見えたとしか思えない。右目が痛んでから見たあの光景、きり丸君が倒れた本棚の……し、下敷きになってた』
怖いほどに一致している光景。
けれどただひとつ違うのは、きり丸くんは怪我もなく無事であること。
……つまり、私が未来を変えたということなのだろうか。
(仮に未来が見えるとして……いつでも見れるの？)
試しに心の中で念じて、右目を閉じてみる。
けれどはっきり見えたあの時とは違い、広がるのは夜を溶かしたような暗闇だけ。
『何もない、か』
やっぱり、自らの意思には直結しないらしい。
となれば、自由自在に使いこなすことはなかなかに不可能だ。
(もしまた、あんなものを見てしまったら)
(でも未来が見えれば、誰かにとっては助けになる？)
一気に期待感と恐怖が頭を過ぎって、私は目を伏せる。
立花さんには誤魔化してしまったし、もう誰にも相談は出来ない。
明日も続くこの生活に、私はこの時、ほんの少しの不安を抱いた。
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凛(プロフ) - 更新楽しみにしてます！ (4月16日 22時) (
レス) id: f020fc6e38 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて本当に嬉しいです。また頑張りますね！ (8月28日 20時) (レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 更新をずっとお待ちしていた作品なので本当に本当に嬉しいです…！！これからも、陰ながら応援させていただきたいです！ (8月26日 8時) (レス) id: 17751e89f9 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - 麗羅さん» お久しぶりです、コメントありがとうございます！そうなんです……。あっちはいろいろ慣れなさすぎて、一時帰国ではなく日本にずっといたい位です笑更新頑張りますね！ (8月24日 1時) (レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - 更新ありがとうございます！海外留学中だったのですね……。すごいです！これからも応援しているので、作者様のペースで更新頑張ってください！ (8月21日 22時) (レス) @page26 id: 5152279fe6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海鈴 | 作成日時：2022年8月13日 22時
