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(なにっ、これ……)
咄嗟に右目を抑え、座り込む。
何が起きたのか分からずにいると、突然、右目に"何か"が映った。
_場所は、本が沢山ある部屋。
小学生くらいの子どもが二人、何冊も本を抱えて歩いている。
『……!?』
まるで映画のように鮮明に映されるそれに、私は思わず言葉を失った。
……これは現実?
いや、今は立花さんと一緒に部屋にいるし……なら、幻覚なのだろうか。
訳もわからず、私はただ呆然と目の前のその光景を見つめる。
_ふと、本を持った子供の一人が近くの本棚にぶつかった。
『…!』
もともと立て付けが悪かったのか、ガタガタと揺れ始める本棚。
……嫌な予感がする。
そう思った刹那、本棚が大きく揺れ、子どもの方に向かって勢いよく倒れて_
"っ、駄目っ!"
声を上げるけど、届かない。
本棚の倒れる大きな音が、頭の中に響いた。
『……っ!!』
_プツリ、とテレビが消されるように再び目の前が真っ暗になる。
同時に痛みが収まり、私は右目を開いた。
(何、今の)
夢とはまた違うけど、妙にリアリティがあった。
「どうしました」という立花さんの声が聞こえ、私は立花さんを見上げる。
『ちょ、ちょっと右目が』
「目が痛むのですか?……少し見せてください」
言われるがまま、私は立花さんに顔を預けた。
すると立花さんは私の目を見た途端、その瞳を大きく揺らし、声を漏らす。
「これは……どういうことだ?ひ、瞳が」
『え?』
……瞳?
瞳が、どうかしたの?
かなり動揺しているその様子に、私は少し不安な気持ちになる。
もっとよく見ようとする立花さんの顔が近づき、立花さんの瞳に私が見えた。
_その瞬間、再び私の目にあの光景が映る。
『……!!』
今度は、その子どもの顔がはっきり見えた。
丸くて可愛らしい目を大きく見開き、何が起きているのかと言わんばかりに眉を顰めている、その子は
(きり丸くん!?)
『私、行かないと…!』
助けなきゃ。
本がいっぱいある場所、この学園ならば図書室しかない。
私は立ち上がり、勢いよく襖を開く。
「ど、どちらに行かれるのです?」
困惑したような表情を浮かべる立花さん。
私は頭を下げた。
『すみません、たくさん教えて頂いて!私、少し図書室に行ってきます』
「……待て、私も行く。しかし何が」
『急がないと!』
立花さんの言葉が終わらないうちに、私は走り出す。
ただ、必死だった。
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凛(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (4月16日 22時) (レス) id: f020fc6e38 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて本当に嬉しいです。また頑張りますね! (8月28日 20時) (レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 更新をずっとお待ちしていた作品なので本当に本当に嬉しいです…!!これからも、陰ながら応援させていただきたいです! (8月26日 8時) (レス) id: 17751e89f9 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - 麗羅さん» お久しぶりです、コメントありがとうございます!そうなんです……。あっちはいろいろ慣れなさすぎて、一時帰国ではなく日本にずっといたい位です笑更新頑張りますね! (8月24日 1時) (レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - 更新ありがとうございます!海外留学中だったのですね……。すごいです!これからも応援しているので、作者様のペースで更新頑張ってください! (8月21日 22時) (レス) @page26 id: 5152279fe6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海鈴 | 作成日時:2022年8月13日 22時