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Aside
_森の中は、どんどん暗くなっていく。
『あー、こっちも行き止まり』
生い茂る緑を前に、私は息をついた。
あの後、とりあえず歩き回ってはみたものの……まだ道という道は見つかっていない。
『ふー』
とうとう足が痛くなって立ち止まれば、左門くんに装束の袖を軽く引っ張られた。
「やっぱり僕が案内をしますよ」
『それはダメ!』
私は大きく首を振る。
気持ちは嬉しいけど、これ以上迷子になってしまったら……
考えるだけでもヒヤヒヤしてきた。
「でも、今日はなんか辿り着けないなー」
『今日はって……こういう事よくあるの!?』
「ええ、気づいたら」
不思議そうに首を傾げる左門くんに、私は思わず吹き出す。
気づいたらこうなってるって……
彼の方向音痴に関しては、もう何もつっこまないことにした。
『……ちょっと休憩しようか』
近くの石に腰掛け、私は竹筒を取り出す。
冷たい水が喉を通る感覚に、持ってきておいて良かった、そう心から思った。
『左門くんも水飲む?』
「えっ」
左門くんは、迷っているように視線を逸らす。
けれど、ここまで歩いてきたんだから……きっと相当喉が渇いているはず。
私は、竹筒を彼の目の前に差し出した。
『ほら、遠慮しない!』
「じゃ、じゃあ……いただきます」
左門くんは控えめに竹筒に口をつけ、生き返る、と絞り出すような声を出す。
私はそれに微笑み返してから、辺りを見回した。
『どうしようかな』
.
.
NO side
「じゃあ、行ってくる」
三年生の神崎左門の捜索、そして天女の捕縛を目的に、上級生が動き出した。
今回の作戦では、主に六年生を中心とした選抜メンバーが外に捜索へ、その他は忍術学園の守りに徹することとなっている。
そんな中、上級生最年少の四年生は西側の警戒を任されていた。
「なぜ、四年生は外に出れないのだ」
四年い組の平滝夜叉丸が、不満げに声を上げる。
彼ら四年生は、西側の警戒という任務に物足りなさを感じていた。
「しょうがないだろ。五年生だって、捜索に出たのは優秀な久々知先輩だけだ」
それに応えるのは、四年ろ組の田村三木ヱ門である。
しかし彼も内心では方向音痴な後輩のことで気が気でなく、一早く外に出たいと願っていた。
そんな彼の気持ちを察したのか、同室の浜守一郎は彼の肩に手を置く。
一方、"ある事"に気づいた斉藤タカ丸はおもむろに声をあげた。
「……あれ、そういえば喜八郎は?」
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海鈴(プロフ) - 麗羅さん» わぁあありがとうございます!性格についてはかなり考えたので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2022年1月28日 18時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - コメント失礼します!すごく面白いです!夢主ちゃんが剣道が得意で明るい性格っていうのがすごく好きです!更新楽しみにしています! (2022年1月27日 22時) (レス) @page2 id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - みこちさん» ありがとうございます! (2022年1月14日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» もしも、この作品にゲストが出るとしたら、雑渡さんか兵庫水軍の皆さんが現れてくださったら…なんて考えてしまいます。応援します! (2022年1月13日 12時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» 後も一つ、犬夜叉と鬼狩りという奴も在りますよ。出来ますれば、コメントを頂けたら嬉しいです。どんなコメントでも大歓迎です。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海鈴 | 作成日時:2022年1月9日 22時