さんじゅうし ページ36
私達の事情に、あの子たちまで巻き込みたくはなかったから
塾はお休みにして、銀時たちは少し遠くの街まで三人でお使いに行かせる事にした
私たちと一番長く過ごしていたせいか、はたまた元々の勘が鋭いせいか、銀時だけはどこか不安げな顔で、ずっとこちらを見ていた
『この塾、こんなに広かったんですね…』
いつも暮らしていた塾の広さに気づいたのは、三人を見送って、塾に二人きりになった後だった
気づけばここに来てから、騒がしくない日なんて無かったから、その静けさが、少しだけ気持ち悪く感じた
松「そうですね…まぁ、最後くらい二人でゆっくりするのもいいでしょう」
そう言う松陽さんだったが、することはいつもとさほど変わらない
将棋をしたり、二人で他愛もない話をしたり、夕刻までずっと穏やかな時間が流れた
夕日も沈みはじめ、そろそろかと思い始めた時だった
銀「__ッ松陽!A!」
酷く息を切らせながら、銀時だけが戻ってきたのは
銀「あんたら今日絶対おかしい!此処にいたらダメだ!なんか良くないことが起こるんだろ?!」
君は、やっぱり気づいていましたか
私たちの手を引っ張っている銀時を二人で、幼い頃のように優しく抱き締めた
銀「___ッ」
松「すまない銀時。君と一緒に行くことは出来ません。」
『ごめんね銀時、心配かけて』
手を離すと最後、そっと耳に口を寄せて言った
『今すぐ裏の戸口から逃げなさい』
銀「__!?」
驚く彼をトンッと後ろへ押しやり、無粋な複数の気配の元へ向かう
塾に火を放たれ、後ろ手に縛られ。その間なんの抵抗もしない私達を怪訝に思ったのだろう
奈落のピリピリとした雰囲気が伝わってきた
そりゃそうか、怖い怖い
火の手が塾に回りきっただった
飛び出してきた銀時が奇襲を仕掛け、それでも力及ばず奈落に取り押さえられた
なんで と叫ぶ銀時の声に、耳を塞ぎたくなる
松「銀時、後のことは頼みましたよ 。なァに心配はないよ 私達はきっとスグにみんなの元へ戻りますから、だからそれまで、仲間を、みんなを護ってあげてくださいね
__約束…ですよ」
そう言うと、彼は左手を指切りの形にして見せた
縛られた手が軋むほどに足掻こうとし、声にならない悲痛な叫び声をあげる銀時が、あまりにも痛々しかった。
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??黒雪??kuroyuki(プロフ) - ありがとうございます!泣ける(?)かは分かりませんが、世界観しんどいです。頑張ります。 (2020年3月9日 20時) (レス) id: a822d14485 (このIDを非表示/違反報告)
七重 - (´;Д;`)おお・・・最新話泣ける(?) (2020年3月6日 17時) (レス) id: cdecf486aa (このIDを非表示/違反報告)
??黒雪??kuroyuki(プロフ) - ありがとうございます!頑張ります! (2020年2月8日 17時) (レス) id: a822d14485 (このIDを非表示/違反報告)
七重 - たまたまこの小説見たけど、めっちゃ面白いです!更新頑張ってください! (2020年2月8日 15時) (レス) id: cdecf486aa (このIDを非表示/違反報告)
??黒雪??kuroyuki(プロフ) - いえいえ!読んでいただいてありがとうございます!同士がいてくれると嬉しいです! (2020年1月26日 20時) (レス) id: a822d14485 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:*雪之丞*yukinojyo | 作成日時:2019年6月16日 22時