さんじゅうさん ページ35
物心ついた時にはもう、私は人並み以上に何でも出来る子供だった
書物は一度読めば覚えられたし、どんなときも完璧な笑顔を作れた。知識さえあれば、経験がなくとも技術を再現できた
それが出来れば″予測″なんてものは簡単だ。人の動き、視線、息遣い、時流、噂、それらをしっかり観察して考えれば、大体のことは分かるものだ
そう、ちゃんと自分の頭で考えていただけなのに。たまたま、外れた事が無かっただけなのに
人には化け物だなんだと奇異の目を向けられ、利用され、あげくの果てに棄てられる。その繰り返し
昔の事が頭を過り、胸の奥底が凍てついていく
松「…A、顔、作り笑いに戻ってますよ」
″松陽″らしくない
怒らせてしまっただろうか、″彼″はこの表情が好きではない様だったから
『__ごめんなさい、″虚様″』
松「松陽、でしょ?」
思わず口をついて出た名前に焦るものの、次の瞬間には何時もの仏のような笑顔に戻っていた
……あぁ怖い怖い
もう最近、虚様より松陽さんの人格の方が腹黒かつドSな気がする
彼は少しムスッとする私の背中を撫でると、自分の方へと私の体を引き寄せた
『ちょ…、いま昼間!なにし…』
松「私が奈落に連れていかれた時、君はここに、松下村塾に残ってくれませんか?」
『えっ?嫌ですよ?』
松「えっ…?」
この人は今さら何を言っているんだろう?
『貴方のような寂しがり屋を一人に出来る訳が無いでしょう』
それに
『約束したじゃないですか、私を独りにはしないって』
彼は、しばらくポカンとしていたけれど、次には本当に安堵したような柔らかい表情を浮かべた
松「…そうでしたね、危うく約束を違えるところでした」
あぁ、思ったより絆されていたようだ
松「A、地獄まで着いてきてくれますか?」
まるで本当に自分たちが 吉田松陽 と 吉田A という人間に成れたかのように錯覚してしまうくらい
あまりにも幸せで暖かだったこの世界は
もうすぐ終わりを告げる
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??黒雪??kuroyuki(プロフ) - ありがとうございます!泣ける(?)かは分かりませんが、世界観しんどいです。頑張ります。 (2020年3月9日 20時) (レス) id: a822d14485 (このIDを非表示/違反報告)
七重 - (´;Д;`)おお・・・最新話泣ける(?) (2020年3月6日 17時) (レス) id: cdecf486aa (このIDを非表示/違反報告)
??黒雪??kuroyuki(プロフ) - ありがとうございます!頑張ります! (2020年2月8日 17時) (レス) id: a822d14485 (このIDを非表示/違反報告)
七重 - たまたまこの小説見たけど、めっちゃ面白いです!更新頑張ってください! (2020年2月8日 15時) (レス) id: cdecf486aa (このIDを非表示/違反報告)
??黒雪??kuroyuki(プロフ) - いえいえ!読んでいただいてありがとうございます!同士がいてくれると嬉しいです! (2020年1月26日 20時) (レス) id: a822d14485 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:*雪之丞*yukinojyo | 作成日時:2019年6月16日 22時