九十五 ページ8
結局あの質問には、答えきれなかった。
かれんと和泉守兼定はそれを察し、また2人で涙を流した。
悲しく、哀しく、かなしく。
その姿が目に焼き付いて、離れない。
寝れない。
少し夜風に当たろうかと、外へ出て、今に至る。
遥「…」
奏先輩から聞いた話だと、その最高司令官は部下に謀反を起こされ、今は牢獄にいるのだそう。
その部下が、奏先輩の父親らしいが。
遥「…なんで」
なんで、彼女は死ななきゃならなかったのだろう。
なんで彼女が死んで、最高司令官は牢獄ででも生きているのだろう。
なんで、なんでと、次々に出てくる怒りからくる疑問は、ドロドロと、私の心を埋めつくした。
彼女の代わりに、アタシが_____
「遥殿…?」
遥「!…一期」
いつもなら気付く一期の気配も気付かないほど、悩みこんでいたらしい。
一期「どうされましたか?こんな夜更けに。風邪をひきますぞ」
遥「…一期こそ、どうしたの。また小言でも言いに来たの」
そっと羽織をかけてくれる一期に、なんだか今の自分を見られたくなくて、顔を逸らす。
一期「1人空を見上げる貴方が放っておけなくて。小言が言ってほしいのであれば言いますが」
遥「いらない」
一期「奇遇ですね。私も、今は言いたくありません」
アタシの隣に並ぶと、一期はホッと息を吐き、空を見上げた。
いつもとは違う、独特な雰囲気を纏う一期に、少し気まづさを覚えた。
一期「いつもなんでも話すのに、こういう時だけ何も話さないのですね」
遥「うっさい」
一期「話してくだされ、なんでも。どんなことでもいい。貴方が話したいと思ったら、素直に話してください」
遥「…うっさい。今回に関しては、アンタの方が言いたいことあんじゃないの」
一期「私は…安心しました。あの方がきちんと愛されていて。それだけです」
一期は、そう微笑んだ。
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作者名:桜海 | 作成日時:2018年10月13日 8時