百六 ページ19
鬼神丸「一期殿」
一期「？鬼神丸殿。どうされましたか？」
宿に帰ってきてすぐに、主殿は本丸に連絡をいれに部屋に戻った。
拙者と一期殿も部屋に戻り、荷物整理をしていた。
遥『アタシは、言葉足らずで、すぐ喧嘩に頼るから…だから仲間が出来ないんだ』
かつてそう言っていた遥が、かれん殿と和泉守兼定に、言葉でぶつかった。
その変化をもたらしたのは、遥自身の成長、本丸の皆の暖かい雰囲気、そして＿＿＿＿
一期「鬼神丸殿？」
一期一振というモノの存在だろう。
昨日、彼と夜に話した遥は、スッキリ、何か吹っ切れた表情をしていた。
それは、話を聞くことしか出来なかった拙者には、させてやれなかった顔。
鬼神丸「…悔しい」
一期「え？」
鬼神丸「が、嬉しい」
一期「鬼神丸殿？」
鬼神丸「が、腹も立つ」
一期「？？？」
鬼神丸「が、安心した」
一期「？？？？？？？」
鬼神丸「が、寂しい」
一期「(どうされたんだこのお方は…)」
人間の心というのは、複雑で。
物の拙者には、難しいことばかりだ。
ただ明確なのは。
遥に会いたいという事。
そして、成長した遥が独り立ちして離れていくのが、とても怖く寂しいという事。
鬼神丸「…主殿のところに言ってくる」
一期「抜け駆けですか？では私も」
鬼神丸「貴殿には先程2人きりの時間をやっただろう」
一期「！」
鬼神丸「頼む。今はものすごく、遥の顔を見たいんだ」
一期「…貸し借りとは…卑怯ですぞ、鬼神丸殿！」
遥に言ってやりたい。
強くなったな、と。
どれだけ不格好であったとしても、気持ちが溢れて泣きそうになっても。
言葉でぶつかった遥に、言葉で伝えたいのだ。
＿＿＿＿＿だから、離れていかないでくれ。
恋人としてではなくてもいい。
1番近くにいた相棒としてで十分だから。
この鬼神丸国重をそばに置いてくれ、主殿。
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作者名：桜海 | 作成日時：2018年10月13日 8時
