【中村悠一】 中村の嫁はわがままがーる

エネルギーの原料 ページ5

「ほんとに大丈夫か？」


今日はアフレコが2本とラジオが1本のお仕事が入った。
具合の悪そうな嫁さん一人残して仕事に行くのはすごく心配だが、声優という仕事をしていると休みというのは取りにくいものだ。


「へーきへーき」


のんきにそういう嫁の顔は青白い。


「まぁ、なんかあったらすぐに連絡しろよ(絶対しないだろうけど)」
「うん、らじゃー(絶対しないけど)」


嫁もまだ活動休止しているわけじゃない。
具合が悪いために別撮りをお願いした。今出演しているアニメは4本。明日から少しずつ始めるらしい。そのためにも今日はおとなしく寝ていてもらいたいが。。。


「マリカーやろーかな。」


ゲームの準備を始めるA。
まぁ・・・楽しんでるならどうでもいいか。


「じゃあ、俺は行くから」


玄関に向かうと小さな足音。
背中に重みを感じるとすぐにかわいい声が聞こえる。


「さみしかったらLINEしてもいい？」


そんなの返事は一瞬で。


「さみしくなくてもLINEしろ」




＿＿＿＿＿＿＿現場にて


「じゃあ、一旦休憩入ります」

監督の一言に肩の力が抜ける。
休み明けの仕事が一番疲れる。

カバンからケータイを取り出すとさっそく嫁からのLINE。


《みてみて。マッドハンター》

一緒に送られてきたのはいつしかのコント劇場で使った俺のサングラスをかけたA


「なにケータイ見てにやついてるんですかぁ。女神とLINEですかぁ。相変わらずらぶらぶですねぇ」


横から顔を覗かせたのは業界でたぶん一番関わりの深い杉田。


「いいですねぇ嫁持ちは暇がなくて」
「おい、近づくな。やべぇオーラが出てる」


なんだかんだ言っても実は杉田は俺と嫁をくっつけた恋のキューピッドだ。似合わないが。


「今日二人の愛の巣にお邪魔しようかな」
「そういや、Aが新作ゲーム買ったから杉さん呼んで来いとか言ってたぞ」
「来いって言われると行きにくい」
「なんでだよ」


相変わらずな会話だが杉田と話すのは一番気が楽だ。


「まぁ、来いって言われたら会いに行かなきゃな。よく言うでしょ。恋って言われたから愛に来たって」
「Twitterに流れてるポエムか。」


そんなことを話しているとまたAからLINE。


《お仕事がんばれ》


そんな一言でも残りわずかだったエネルギーが満タンになってしまう。


「そろそろ再開します」

「うしっ。行くか」
「お、おう。急にやる気出たな」



《エネルギーの原料は嫁です》＿＿＿＿Twitterより

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