贖罪の塔【オリジナルファンタジー】 (ページ5)

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1.純白の罪人エルページ5

「それじゃぁ、エル。この塔での過ごし方を説明しようか。断罪人については…知ってるよね？」

死んだ目をしながら呆然と横たわるエルに、エレはできるだけ優しく微笑んだ。断罪人、と言うところで自分を指差しながら反応のない妹の顔を見つめていた。

「…返事がないってことは知ってるんだね」

エレはゆっくりと、エルが横たわるベッドに歩み寄ると浅く腰をかける。そして、エルの頭に手を置くと悔しそうに唇を噛む。まるで、ごめんねとでも言うように…

「まず、この塔は３つのエリアに分かれていて、１つは【自然のエリア】２つ目はこのエリア【無機質
のエリア】３つ目は【夜の箱庭】」

指を降りながら、エレはゆったりとした口調で言葉を紡ぐ。ただ、その声がエルの耳に届いているのかは定かではなかった。

「それぞれのエリアは役目があって…自然のエリアは名前の通り庭みたいな感じで、ずっと風が吹いている。無機質が病院みたいな所で、真っ白。ずっと明るいんだ。3つ目はずっと夜で人口の月が輝く場所…プラネタリウムみたいな感じかな。それぞれ、罪人が住む部屋があるんだ。エルは夜の箱庭のエリ
アに決まってるんだ」

息を吸い、一気に吐き出すように今度は説明するエレの顔を、エルは虚ろな瞳で見つめていた。３つ目のエリアの説明を聞いている時だけ、エルの目は少し輝いている気がした。

「他には…中央の癒しの間。そこでの戦闘は禁止されていて罪人と断罪人の癒しなんだ。本もあるし…
近くには食堂と風呂場があるよ」

贖罪の塔の内部を楽しげに語るエレに、エルは初めて口を開く

「なんだか…宿泊施設みたいだね。ちゃんとベッドもお風呂もある…そんな贅沢、できる日が来るなんて思わなかった」

顔は無表情に変わりはなかった。けれど、その声には絶望の中に微かだが光が混ざっているとエレは感じた。

「そうだね、それは僕も驚いた。施設の充実度にはね。でも気をつけて。問題が起きれば断罪人が…」

「分かってる…痛くても死ねない断罪が待ってる。噂で聞いた。けど、その痛みも私は楽しむよ」

エレの言葉を遮るようにエルは強い口調で言った。その言葉に、強い決意が滲んでいるように思える。

「じゃぁ行こう。もうすぐ癒しの間で君の紹介が始まる。立てるかい…？」
「うん」

優しく笑いかけたエレの手を取り、エルはベッドから飛び降り、小さな一歩を踏み出した。