熱視線は躱すに限る ページ10
「えーと、そんじゃまァ明日。今日と同じ時間でいーんでしたっけ」
「はい。よろしくお願いします」
依頼人が住まうアパートの壁も、もう見慣れたもの。
今日は銀時だけが送迎で、新八と神楽は幕臣を騙る兄をどう追い返そうか作戦会議中だ。さっちゃんは仕事の合間を縫って来たらしいので、名残惜しげに天井裏に引っ込んだ。
それじゃ、と踵を返すと、控えめに呼び止められる。
「その……ありがとうございます。何から何まで……」
「あー…や、依頼なんで」
「こんなに気にかけていただいたのは初めてで……
本当に、ありがとうございます」
「いぃえぇ、そんな」
よそ行きの上擦った声でどうにか帰ろうとするも、ここで話は終わらないのか、あの、と接続詞の欠片がほろほろと溢れる。
よくよく見れば、頬紅でない朱が差しプラス3度くらい熱を孕んだ視線が銀時の足を縫い止める。
コレはあれだ。いつぞやの面倒な事件の前兆の似たようなものだ。
話はさっさと切り上げるに限る。
「こんなに、私のことで真剣になってくださって……」
「依頼なんでェ」
「あの女の子も、身体を張って囮になってくれるだなんて……」
「や、あのバカはいつもああなんで」
「本当に、感謝しきれないくらいです」
「……まだ、ストーカーってのは捕まってねェんで。それまでは、まぁ」
「ええ、はい。よろしくお願いします」
区切りが悪いが、とりあえず句読点は打てたのでそんじゃと来た道を返す。
背中に視線がグサグサ刺さるのが分かる。こういうとき、人の気配に敏感な己が恨めしい。
良くも悪くも、人を惹きつけるのが坂田銀時という男だ。
男も女も、何だかんだいってその存在を頭の片隅に置いている。人の中に居場所がある男なのだ。
それゆえ、要らんものも引き寄せてしまうことは多々あるが。幽霊とか。蚊みたいな天人とか。トラブルとか事件とか。
「……おっ」
「あ、おかえりなさい」
スナックの前を横切れば、ちょうど暖簾を掛けたAと鉢合わせた。護衛の依頼が入ってからはとんと目にしてなかったが、相も変わらず働き者のようだ。指先に巻かれた絆創膏は、先日お登勢が話していた裁縫の仕事の証だろうか。
銀時が一人でいるのを認め、きょろ、と眼球が動く。誰かを探しているように見えた。
「どーした」
「いや、えっと……今日はあの女性、いらっしゃらないんだなぁと」
「あの……?」
「最近いらっしゃる、綺麗な方です。
恋人の方かなぁ、と思って」
嘘を嘘だと主張するとまたまた〜って言われるの、なんかスゲー腹立つ→←男も女も愛を求めるストーカー
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ワッフル魔神(プロフ) - 更新待ってました!これからも応援しています!更新頑張ってください‼️ (4月2日 20時) (レス) id: 144fda3ce7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2024年3月27日 8時