下取りって未だに仕組みが分からない ページ21
お登勢の言う通り、大姉弟は翌日の昼には江戸に帰ってきた。
本来なら汽車の関係でもう少し遅くなる予定だったが、親戚が車を出してくれたので早く戻ることができたらしい。
真選組が踏み込んだ後の実家は、言葉を選ばないのであれば悲惨そのものだった。
否、攘夷浪士らが乗り込んできてからも酷かったのだが、輪をかけて凄惨さが増していた。刀で斬り裂かれた障子、血飛沫が残る壁、防空壕を取り外したフローリングの板、へし折れた竹刀、枯れ落ちた仏壇の花。道場だけでなく居間や廊下でも斬り合いがあったのか、ちゃぶ台は真っ二つに折れ、桐箪笥は辛うじて無事ではあるものの何かぶつかったのか引き手が潰れかけていた。
冷蔵庫の中身はほぼ空で、これまで送っていたお金をほとんど攘夷浪士に使われていたのだと思うとやるせない気持ちになる。冷凍庫には氷すら入っておらず、なんとか取り出したのはへばりついた保冷剤だけだった。
ゴミ箱は溢れ、生ゴミのつんとした臭いが鼻につく。これは最優先事項だと、早急に片付けた。
幸い、無事なものもいくつかあった。父の肩身の掛け軸、母が生前大量に仕入れた反物、家族写真を含めたアルバム、美菜や沙代の寺子屋の道具、小さい頃の龍之介と孝太郎の稽古着、沙苗のスキンケア用品、師範ふたりが残してくれた指南書、Aの簪など。
残ったものは全て次の家に持っていこうと決めて、壊れたものは処分。使えるものは引き続き使おうということで、冷蔵庫やラジオはそのまま継続して使用が決まった。いつぞやか、母が爆発させてそのままにしていた電子レンジはさすがに使えなかったので処分に回した。卵を入れたままレンジに入れるなとあれほど言っていたのに。
そうこうしているうちに叔母夫婦と合流。改めて、息子の謝罪をさせて欲しいと土下座された。さすがに頭を上げて欲しいと頼んだが、弟妹は姉のように優しくはなかった。
釈放されたら1000発くらい殴らせろと意気込む長男、次はタマ取ったると殺気立つ次男、姉ちゃんが今まで苦労した分働かせて耳揃えさせろと物騒な物言いをする次女、慰謝料はこのくらいだとどこから知識を蓄えたのか書類を持ち出す三女、神様に祟られないといいねなどと縁起でもないことを言い始める末妹。
皆それぞれ怒っていたのだ。姉は牢で何発も殴ったが、それを上回るほどの血の気の多さに引いた。さすがは母の血を引く子だと慄いたが、股間を踏み抜いた女がそれを言うかというツッコミはなしだ。
団子屋で昨日の思い出話を→←そういえばそんなこともあったよね、ってこと絶対今じゃないタイミングで思い出す
837人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ワッフル魔神(プロフ) - 更新待ってました!これからも応援しています!更新頑張ってください‼️ (4月2日 20時) (レス) id: 144fda3ce7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2024年3月27日 8時