依頼はあくまでも依頼であるけれど、この心はまた別物 ページ14
なんてことない会話を続け、一旦離脱する目的地までのんびり歩く。歩幅を依頼人に合わせているため、銀時のブーツの足跡はいつもより小刻みだ。
「爪だけでもケアとかしてくれるんすか」
「はい。男性のお客様だと、ハンドケアやネイルケアのメニューを選ばれる方が多いですね。かぶき町の方ですと、ホストの方や黒服の方がほとんどで」
「へー」
会話の内容は予め決めておいた。銀時が提案するものは大抵下ネタしか発生せず、かといって重度の甘党な面を見せても糖尿を心配される一途だ。ならば、依頼人の仕事の話にシフトした方がいいというこれまた新八からの提案だった。駄眼鏡が参謀気取りやがって、とは銀時の悪態だ。
目的地は大江戸マート。駐車場など視界を妨げるものがなく、子どもたちも様子を伺いやすいのでここにした。
ここで銀時が厠に行くと理由をつけて離れることになっている。というか、本当に行きたくなってきた。やべぇいちご牛乳飲みすぎたかな、と膀胱を心配し始めた。
「あっ、やべ。すんません、ちと厠行ってきていいっすか」
「あ、はい。どうぞ」
「すんません、スグ終わらせますんで」
大江戸マートの自動ドアを潜る直前、新八と神楽に向かって小さく頷いた。グーサインが返ってきたので、安心して店内に入る。そして厠に駆け込んだ。マジでやばかった。
依頼人は入口から少し距離を置き、ふうと溜め息を吐く。これで本当に釣れるのかしら、とも思っていた。作戦通りにいくのならまだしも、子どもが考えたものだ。自分も乗ったが、正直半信半疑でもあった。
でも、万事屋さんに守ってもらえるならそれもいいかしら、とも思う。この期間、万事屋の皆は優しかった。特に銀髪の彼は、元同僚から聞いた通り怠そうな態度を取りながらもちゃんと守ってくれた。歩幅は合わせてくれるし、 話の内容も面白くてつい笑ってしまう。幕府へのツテもあって、顔だって悪くない。あの太い腕で抱きしめられたら、どんなに嬉しいだろうか。思わず想像して、また心臓に火が灯る。
ストーカーは許せない。でも少しだけ感謝している。なんたって、万事屋さんと知り合えたのだから。
この先また依頼があったら助けてくれるかしら。優しい人たちだから、もしかして依頼なんて建前もなく引き受けてくれるかも_____
「見つけたよ」
はっとして現実に意識が引き戻される。目の前には、あの男がいた。
脂汗をかいて、じりじりと近づいてくる。女の足は動かなかった。
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ワッフル魔神(プロフ) - 更新待ってました!これからも応援しています!更新頑張ってください‼️ (4月2日 20時) (レス) id: 144fda3ce7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2024年3月27日 8時