オマケとか特典とかが欲しいならそれだけ販売してくんねーかなってこと、あるよね ページ4
さて、それからしばらく。
いつぞや編集部に出した原稿が、校閲を通過し印刷所を通り、帯が巻かれて冊子になった。
つまり、新たに岡 都々喜の新作が出版されたのである。
岡 都々喜の名を聞けば自称評論家や読書家が挙って書店に予約し、販売開始日には店頭から並ばれた瞬間に消えるという現象が起きた。
その影響は江戸のみに留まらず、駿河、武州、陸奥国、京と全国にその波紋を広げていた。
「ったく、なんで俺たちがこんなんに駆り出されなきゃならねぇんだ」
「まぁまぁ、いいじゃねェですかィ。お陰で面倒な書類仕事なんてせずに済みまさァ」
「いやあるからね。なんならお前が片さなきゃならねぇ始末書溜まってっからね」
「んなケチケチせずになんとかしてくだせェ死ね土方」
「サラッと呪ってんじゃねぇよ死ね総悟」
江戸一番の店構えを誇る書店前にて駐車するパトカー内。
不機嫌を隠そうともせず煙草を吹かす土方と、相も変わらず上司をおちょくる沖田もこの岡 都々喜現象に巻き込まれた被害者であった。
というのも、かつて彼の新作が発売された際、売れっ子作家の人気にあやかろうと各書店が店舗限定特典などつけたもので、それを目当てにしたファンや転売ヤー、コレクターで取り合いが起こる、というちょっとした騒動が勃発したのだ。
奉行所が駆り出されたのもつかの間、過激化した争奪戦は遂に窃盗犯をも生み出し、最終的には真選組が出張る結果となった。
この過去の事例を踏まえ、各書店にて警察の見張りが命じられ、真選組も漏れなく出動せざるを得なくなったのである。
騒動についてはもちろん作家本人は関わっておらず、書店や出版社が作家の恩恵を受けようと欲を出した末路である。こんなにも過激化するとは思わなかったため、彼をはじめとした作家たちが暫し出版社に原稿を卸すのを控えていた時期があった。
「しっかし、さすがは人気作家の岡 都々喜。予約で重版確定たァ、大したモンでィ」
「なぁにが人気作家だ。大体、素性が知れねぇ野郎が書いた書籍なんざ読む気がしねぇ」
「結構面白ぇですぜ。なんといってもこの細けぇ描写、堪んねぇや。特にこの拷問の説明シーンなんざ、読み応えがありまさァ」
「いやなんで持ってんだよ!!」
「いやァ、いつぞや幕府のお偉方に薦められやしてね。試しに読んでみりゃあ、意外と面白ェモンだったんで」
「お前に書を楽しむ心があったとはな。驚きだ」
「ひでぇや、俺ァ誰よりも情緒を楽しむ男でさァ」
オタクが本当に欲してるのは、登場人物が実際に使ってたグッズとかそういうもんなんだよ→←過去の話をする男には3割程度の興味くらいがちょうどいい
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スミカ - 物凄く面白いです。高杉との絡みが最高に好きです!決して行き過ぎたチートじゃないとこも好きです。応援してます (4月13日 17時) (レス) @page19 id: daf320e252 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2024年2月17日 21時