お返しと、そのまたお返し ページ22
「昨日はありがとうございました。あの、こちらよかったら」
「おや、わざわざすまないねぇ。ありがたくいただくよ」
「ケッ、安イ菓子デ機嫌取ロウナンザ甘インダヨ」
ところ変わって、場所はかぶき町の一角『スナックお登勢』
店を出た後は時刻の夕方まであてもなくふらふらして、なんとなく見かけた店で団子を食べたり、雑貨を物色したりなどして時間を潰した。和菓子屋を出たのは昼過ぎだったため、気が急いたと思ったが案外日が暮れるのは早かった。
借りた着物と和菓子を手渡し、ようやく両手が空いた。手のひらにはわずかだが、持ち手の紐の跡が刻まれている。
「こいつは……『鏡月堂』の菓子じゃないか」
「羊羹です。小分けになってるので、皆さんで召し上がってください」
「何デスカオ登勢サン、コノカシコブッタ箱ハ」
「『鏡月堂』っていや、江戸じゃ三本の指に入るほどの老舗の和菓子店さね。著名人だのセレブだのが手土産代わりにするっていう代物だよ。
わざわざいいのかい」
「ええ。そこの女将とは知り合いなので」
「悪いねえ。お返しと言っちゃなんだが、一杯奢るよ」
「あ、お酒はあまり飲めないので……何か摘めるものをいただけますか」
「ああ、あるよ」
「ナカナカドウシテ見ドコロガアル男ダナ。コンナ小サイノジャナクテモットデカイノ寄越セ」
「3つも食べといて言うセリフじゃねーよ!!」
既に開けられていた箱から包みが消えている。お登勢が箱を強奪し、いそいそと奥へ引っ込んだ。
スツールに腰掛け、小さく鼻から息を吐いた。昨日とは違い、ほんの酒の香りが芳しい。
棚に飾られている酒瓶の白いラベルを見て思い出した。
櫛、まだ返してもらってない。
「はいよ、お待ちどう」
「すみません、ありがとうございます」
「それと、これ。忘れもんだよ」
「ああ……やっぱり、ここにあったか」
「大事なもんならちゃんとしまっときな。うちの従業員じゃ、うっかり売りかねないからね」
「おっと、危なかった」
袂に巾着をしまいこみ、慣れた重みにほっと安堵する。ようやく手元に戻ってきたときの安心感はなんだろうか。
櫛が帰ってきたのを反芻しながら、出された小鉢に手をつけた。じゃがいもと鶏もも肉が染み込んだ煮物だ。ちょうど空腹になりかけたところで一口、食む。
「美味しい、」
「そらよかった。ウチは2階に大食らいがいるからね、少しでも腹持ちのいいおかず用意してんのさ。
アンタもたまには来なよ」
酔いの席でも忘れちゃならないものがある→←手土産は自分に出されるかもしれないから余分に買っておけ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 413人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
スミカ - 物凄く面白いです。高杉との絡みが最高に好きです！決して行き過ぎたチートじゃないとこも好きです。応援してます (4月13日 17時) (
レス) @page19 id: daf320e252 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：pillow | 作者ホームページ：
作成日時：2024年2月17日 21時
