マダオはどこまで堕ちようと結局はマダオ ページ14
「いやぁ、マジで助かったわ。この大雨じゃどこの店も閉まっててさァ」
「一服したら帰んな。ここはホームレスの集い場じゃないんだよ」
「そんな固ぇこと言うなって。なぁ兄ちゃん」
「あ、はぁ……」
音の主はマダオをかけたサングラス、もとい長谷川だった。なんでも競馬でスって文無しになり、さらには公園の
屋根もなければ壁もなく、酒でも飲んで身体を暖めようとしたところでこの大雨だ。万事屋に赴くも、居留守を使われているのか不在なのか明かりはなし。返答もないしで、階下のスナックに来たというわけである。
「いっそのこと、ここで雇ってくんない? それなりに働けるし、金勘定もできるよ?」
「寝言言ってないでさっさとツケ払いな。次やったら出禁にするからね」
「そんなァ!! タダ酒飲めんのここくらいしかねぇってのに!!」
「こっちも商売やってんだ。ナマ言ってんじゃないよ」
「殺生な……
なァ、兄ちゃんからもなんとか言ってやってくれよォ!!」
「え、あっ、僕ですか?」
「絡むんじゃないよ!! この人はアタシが連れてきたんだ、押しかけのアンタとは違うのさ」
「ええっ!! まさか、あんたお登勢さんのコレ……」
「どんな勘違いしてんだよ!! 大雨に打たれてたから連れてきただけさね」
「えぇ、俺と同じじゃァん。ねね、兄ちゃんからも掛け合ってくんない? 俺このままじゃマジで風邪ひきそうでさァ」
「そのまま風邪拗らせてくたばった方がマシだと思うがね」
「そォんなこと言わないでよぉ、ヘッブシ!!」
「チョット、コッチ二唾飛バスナヨ。タダデサエ不健康ナノニ、病原菌デモ移ッタラドウシテクレンダコノヤロー」
「ひどい!! 俺そんなに臭い!? 一昨日銭湯のお湯かっぱらって被ったんだけどなァ」
袂をすんすん嗅いでも雨に濡れては臭いどころではない。
あんまりにも扱いが可哀想なので、手持ちの手拭いを貸してやった。お登勢はスナックに入れるだけで、スツールに腰掛けることさえ許さなかったので。お陰で床がびちゃびちゃである。
「あぁ、ありがとうねェ兄ちゃん。ここらじゃ見ない顔だけど、越してきたの?」
「いえ、少し離れたところに住んでまして」
「そうなんだ。俺、長谷川ってんだ。よろしく」
「清水といいます」
長谷川が乱入して15分。ようやく双方の自己紹介ができた。
ふたりの男はそれぞれサングラスとレンズを通して、警戒を緩まない笑みを見せた。
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スミカ - 物凄く面白いです。高杉との絡みが最高に好きです!決して行き過ぎたチートじゃないとこも好きです。応援してます (4月13日 17時) (レス) @page19 id: daf320e252 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2024年2月17日 21時