一寸先に鷹の翼【銀魂】 (ページ2)

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ネーミングセンスは個人の感性が色濃く出るものだページ2

結局みぞれのシロップをかけてシャクシャク食べた。屋台で食べられるかき氷とはまたひと味違う。

よくよく見てみれば、みぞれに使用されているのは上白糖。なるほど、甘党の銀時の舌にはよく合うわけだ。

ミンミンと蝉の合宿にうるせぇと愚痴れば、毎年こんなもんでしょと破顔される。故郷は江戸とは比べものにならないくらいの田舎だったが、虫の騒々しさは変わらなかった。

夏の時期になると、いっせいに森だの林だのに駆け出してカブトムシ狩りに精を出していた。高杉はくだらねえと一蹴したが、銀時に自信が無いのかとからかわれ、ムキになって結局は参加していた。

先のように清水はクワガタばかり捕まえ、カブトバトルだというのに参戦させては負けていた。それぞれに付けた名前はなぜか全部おにぎりの具材だった。

桂はカブトムシ狩りには積極的ではなかったが、勝負事となると熱くなるのは今も昔も変わらない。銀時、高杉、桂の3人が残り、決勝戦は何刻でも続き、最終的には恩師までもが参戦する始末だった。

「懐かしいねえ」

「ああ……」

「生きてるかな、ツナマヨ」

「だからさ、お前なんでおにぎりの具なの？ツナマヨに関しては5号までいただろ」

「仕方ないじゃんか。桂くんがツナマヨのおにぎりしか握らないんだから」

「それ昼メシ!! えっ、お前まさかそれで名前付けてたのかよ！？」

「そうだよ。たまに誰か別の具材で握ってたよね」

「いやいたけどよ……」

まさかの昼メシ由来だった。確かに、村塾の昼食はおにぎりしか出ず、それも桂が握ってばかりだったので具はツナマヨのみだった。たまに飽きた誰かが昆布だのおかかだのを入れて味変していたが、そういうことだったのか。

実はそんな銀時も、カブトムシの名前には甘いものの名詞を付けていた。当時はパフェだのプリンだのと洒落た洋菓子はなかったため、「小豆」「小倉」「たい焼き」だのと似通った名前ばかりだった。どっこいどっこいである。

「っあﾞー、いってぇ……」

「ああ、アイスクリーム頭痛？ゆっくり食べなよ」

「んだァ、アイス出してくれんの？ボックスで頼まァ」

「そういう名前の頭痛なんだって。ボックスサイズなんてあるわけないだろ。33(サーティサン)じゃあるまいし」

「んじゃバーゲンダッシュ」

「もっとないよ」

かき氷機と器を片し、縁側に2人して寝転がる。あﾞぁ、とオッサン臭い溜息が漏れた。

都会の澱んだ空気と、蝉の終わらないコンサートが描き消した。