不法侵入お母さん ページ30
暖かい出汁の香りで、目が覚めた。
ゆったり浮上する意識と、まだ気だるい身体の相反する感覚を感じ取り、目をこじ開ける。
とんとん、と軽い包丁の音がした。
「目が覚めたか」
「……ぅえ…？」
厨房から出てきたのは、長髪の幼馴染。どこから引っ張り出してきたのか、割烹着姿だ。傍らには、あの謎生物もいる。
のっそり起き上がると、謎生物が支えてくれた。器用に白湯が入った湯呑みと薬を乗せた盆を持ってきてくれた。
どうして、と思った。呼んだ訳でもないし、ここに誰か来るとは思わなかったからだ。
「昨夜はだいぶ冷えただろう。俺も暖を取ろうと銀時の家に行ったのだが、生憎留守でな。お前がこの近辺にいるという情報は得ていたため、そこの風呂場で一服させてもらった」
「……追い炊きした？」
「ああ。檜風呂とはいい趣味だな、久方ぶりのいい湯だった」
となると、まさか昨夜からいたのか。声をかけてくれればよかったのに。
おじやの小鍋を持ち、そら食えと膝をついた。どこの良妻だ。
「すぐにお暇しようと思ったのだが、案外暖かくてな。先ほどまで入っていたのだ」
「え、まさか……ずっと？」
「追い炊き五回くらいしたか。いやもっとか？ つい眠ってしまってな」
「いや、嘘だろ……誰が電気代払うと思ってるんだよ…」
「いやすまんな。それで、礼に食事を思ったんだが……何やら魘されていたようだったのでな。勝手に漁って悪いが、薬とおじやを用意した」
「ああ……ありがと」
「まったく、熱しゃまシートも冷やペタシートもないとはどうなっとるんだ。お前の財布から失敬したぞ」
「足りた？」
「十分なくらいにな」
ほら眼鏡、と手渡され、慣れた感覚を取り戻す。
おじやとは言うが、残ったスープに冷凍飯をぶち込んだ簡易雑炊だった。ちゃんと解凍はされている。
ずるずると食べると、胃の中が空っぽだったことに気づいた。上手い上手いと食べ、すっかり鍋の中身を食い尽くした。
「そら、薬だ。あと、一応体温も測っておけ」
「んー」
「エリザベス、洗い物を頼む。しかし、お前の寝汚さは健在だな」
「え？」
「胸元を見てみろ。俺ならまだしも、盛りのついた男なら垂涎物だぞ」
「なんで男限定？ そんな人いないから」
「分からんぞ。蝶の着物を着た男とか、片目に眼帯巻いてる男とか、やたらポエミーな男とか」
「それ明らかに誰か個人のこと言ってるよね」
「誰もボンボンの低杉とは言っていないぞ」
「それ答えじゃん」
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うす - 更新ありがとうございます…！この作品が大好きです応援してます！ (9月19日 22時) (
レス) @page50 id: d6b5e366a4 (このIDを非表示/違反報告)
oyz031(プロフ) - とても面白く、興味深いお話で続きが気になります。応援しています (8月30日 0時) (レス) @page49 id: 7ddb3de917 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ - いつまでも更新お待ちしております、！ (5月21日 18時) (レス) id: c35eeb83bd (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 最近めちゃくちゃ更新されてますね！すごく楽しみにしてるので嬉しいです！無理のない範囲でこれからもお願いします！ (2023年4月22日 20時) (レス) id: 19052b8914 (このIDを非表示/違反報告)
モブ - ものすごくこの小説が大好きです！次の話に進むたびドキドキしてしまいます...!!! (2023年3月24日 2時) (レス) id: 24c7afdf4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：pillow | 作者ホームページ：
作成日時：2021年3月1日 15時
