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歳食うと何でも感傷的になりやすい ページ29

桂は幼少期に両親、祖母を亡くしても身の回りのことは全て自分でやっていた。悲観することなく、己の矜恃を保ち(サムライ)であることを誇りに思いながら。

高杉はボンボンであったが、親の言いなりになることはなく自分の意志を持った少年だ。名門塾の門下生でありながら、松下村塾に道場破りに来ては銀時にやられていたらしい。

その銀時はというと、戦争孤児であり『屍を喰らう鬼』などと言われていたとか。松陽に会うまでは、大人に白旗を上げたことは無かったと。それでも、戦場で生き残った彼は誰よりも世界の残酷さを知っていた。

比べてどうだ。親に折檻され、殴られるのが怖いという理由で従う。酒を買ってこいと言われ、門前払いされたときの絶望感は身を切るような辛さだった。それでも、まだ親がいるという事実だけが、救いだと勝手に思っていた。


『てめえを殴る野郎なんざ親じゃねぇ。血が繋がっただけの、赤の他人だ』


紅葉を見ながら呟いたのは、初めてはっきりとした輪郭を、世界を与えてくれた彼だった。

眼鏡という、庶民には手が出せない高級品をぽんと渡すことがどういうことか、知らないわけでもあるまい。

彼はそれを掛けろと押し付け、こう言ったのだ。

初めて見えた、彼のかんばせ。整った顔立ちは、こういうことを言うんだなと思った。

紫水晶、という覚えたての言葉を口にして、訝しげに眉を顰めた。見たことあるのかと聞かれれば、ないよと言った。ないのかよ、うん。ないよ。と。


『俺も、嫌ほど親に殴られた。お前のためだって、何度も言われた。

けど、お前は違う。お前のためなんかじゃねぇ、自分のために殴ってんだ。

お前を大事にしてくれるやつは、人を殴って笑うやつか?』

『……ちがう』

『そうだろ。俺だっている、松陽先生だって、ヅラだっている。あのアホ面ぶら下げたヤローだって。

お前のことを殴って、笑ったりしねェ。ボロボロになるまで痛めつけたりしねェ。

親がなんだ。親じゃなくたって、守ってくれるやつはたくさんいるだろ』


決壊した涙腺が、初めて機能した日だった。

嬉しくて、辛くて、怖くて。それでも、感情を伴った涙だった。

泣き声は出さなかったが、慌てた高杉の声に引っ張られるようにして桂と銀時が来た。高杉が清水泣かせた、とはしゃいで。

泣かせてねぇよ、

じゃあなんで清水泣いてんだよ、

うるせぇ天パ、

天パ関係ねーだろ!!

よさないかお前達。


心から、笑った日だった。

不法侵入お母さん→←歳とると風邪は治りにくい



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うす - 更新ありがとうございます…!この作品が大好きです応援してます! (9月19日 22時) (レス) @page50 id: d6b5e366a4 (このIDを非表示/違反報告)
oyz031(プロフ) - とても面白く、興味深いお話で続きが気になります。応援しています (8月30日 0時) (レス) @page49 id: 7ddb3de917 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ - いつまでも更新お待ちしております、! (5月21日 18時) (レス) id: c35eeb83bd (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 最近めちゃくちゃ更新されてますね!すごく楽しみにしてるので嬉しいです!無理のない範囲でこれからもお願いします! (2023年4月22日 20時) (レス) id: 19052b8914 (このIDを非表示/違反報告)
モブ - ものすごくこの小説が大好きです!次の話に進むたびドキドキしてしまいます...!!! (2023年3月24日 2時) (レス) id: 24c7afdf4d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:pillow | 作者ホームページ:   
作成日時:2021年3月1日 15時

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